認知症のBPSD(行動・心理症状)とは?症状や対応方法を解説

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BPSDとは認知症の症状の1つで、周辺症状や行動・心理症状とも呼ばれています。BPSDは認知症になれば必ず現れるという症状ではありません。環境や周囲の人の関わり方によって症状の現れ方に個人差があります。本記事では、BPSDの症状と介護現場における対応方法について解説します。

BPSD(行動・心理症状)とは?

認知症の症状には中核症状とBPSDの2種類があり、BPSDは「周辺症状」や「行動・心理症状とも呼ばれています。

中核症状は認知症になれば必ず現れる症状のことを指すのに対し、BPSDは認知症になっても症状の出現に個人差が大きい症状のことを指します。

中核症状とBPSD、それぞれの具体的な症状は以下の通りです。

中核症状 記憶障害・実行機能障害・見当識障害・失語・失行・失認
BPSD 精神症状:不安・抑うつ・妄想・幻覚・誤認
行動症状:徘徊・多動・不潔行為・異食行為・収集癖・暴言・暴力


BPSDが生じる主な原因は、以下の通りです。

中核症状(記憶障害・見当識障害)による、強い不安や混乱、戸惑い

 周囲の人の不適切な言動や関わりによる、強い不安や自尊心の低下

BPSDは適切な環境づくりや周囲の人の関わり方により、症状が改善することも期待できます。

そのため、認知症介護に携わる方は、BPSDの症状とケアの方法を理解しておくことが大切です。

BPSD(行動・心理症状)で見られる症状

認知症のBPSDでは、具体的にどのような症状が見られるようになるのでしょうか。

ここでは、BPSDで見られる症状を5つご紹介します。

不安・抑うつ

「認知症の中核症状である見当識障害により、今いる場所や時間が分からない。」
「認知機能の低下により、これまでできていた家事や買い物などができなくなった。」

このような不安な感情の増加により、抑うつや無気力状態に陥ってしまいます。

不安・抑うつが進行すると、身の回りのことに無頓着・無関心になってしまったり、睡眠障害が生じてしまったりすることも少なくありません。

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妄想・幻覚

認知症による認知機能の低下により、以下のような妄想・思い込みが生じやすくなります。

「財布を盗まれた」「指輪を盗まれた」といった、物盗られ妄想

 「あの人に悪口を言われている」といった、被害妄想

特に認知症の高齢者の多くは、記憶障害により大事なことを忘れてしまうという不安から、お金や身の回りの物に執着し盗られないようにと守る傾向があります。

また、幻覚によって現実にない人や物が見えたり、実際に起こっていない出来事をさも実際に起きたかのように話す作話行為を行ったりすることもよくある症状です。

徘徊・多動

認知症の中核症状である見当識障害により、「自分が今いる場所が分からない」「周りにいる人が誰か分からない」といった混乱が生じます。

そのため、「家に帰りたい」という思いが強くなり、徘徊や帰宅願望が現れます。

「今日はここに泊ることになっています」と伝えても、本人が納得しない場合が大半です。

また落ち着きがなく、常に同じ行動をとったり、同じコースを歩き回ったりする多動が現れるケースもあります。

無理に止めようとせず、徘徊に付き添うことや、徘徊察知センサー・GPSの利用で高齢者の身の安全を守ることがおすすめです。

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不潔行為・異食行為

おむつに手を入れて便を触ってしまうという不潔行為や、タオルやコップなどの食べられない物を食べようとする異食行為が現れる場合があります。

いずれも認知機能の低下が主な原因で、不潔行為においては失禁による不快感が原因として考えられます。

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暴言/暴力・介護拒否

「これまでできていたことができなくなる」
「大事なことをすぐに忘れてしまう」
「これまで理解できていたことが理解できなくなる」

こういった混乱やジレンマが原因となり、怒りやすくなったり、暴言・暴力で他者を傷つけてしまったりするという症状が現れます。

また、認知機能・理解力の低下による不安から、トイレや入浴、服薬、着替えなどの介護を拒否してしまうことも少なくありません。

暴言や暴力、介護拒否が見られた場合は無理をせず、場所や気持ちの距離をとったり、対応者を交代したりして様子を見るようにしましょう。

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BPSD(行動・心理症状)と中核症状との違いは?

認知症には中核症状とBPSDの大きく分けて2種類の症状があります。

中核症状とBPSDには、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、中核症状の具体的な症状と、BPSDとの違いについて解説します。

認知症の「中核症状」とは?

認知症の中核症状には、以下の5つがあります。

記憶障害 記憶障害とは「買ったことを忘れて同じ物を何度も買ってきてしまう」「ついさっき来た来訪者・面会者の顔と名前が思い出せない」といった状態になる脳の障害です。
特に子どもの頃や若い頃の記憶は残りやすく、最近の出来事や体験を忘れやすいという特徴があります。
見当識障害(失見当) 見当識障害とは失見当とも呼ばれ、「今日の日付や時間、季節」「今いる場所」「家族や介護職の名前」が分からなくなる症状です。
見当識障害により、自分の年齢や生年月日などを忘れることもあります。
実行機能障害 実行機能障害とは「買い物や料理の手順が分からない」「公共交通機関の利用方法が分からない」といった、計画性・物事の遂行能力が欠如する脳の障害です。
失語(言語障害) 失語とは言語障害とも呼ばれ、「相手の言葉が理解できない」「自分の思いを言葉で表現できない」といった、コミュニケーションの困難さが生じる脳の障害です。
失行/失認 失行とは「ご飯を食べる」「服を着る」といった日常生活動作や、「箸の使い方が分からない」といった動作困難が生じる症状です。
また失認とは「喉が渇いたと感じない」「片方の手足が認識できず服が上手く着られない(半側空間無視)」といった、自分の身体や身体の状態・体調を認識することができなくなる症状です。

中核症状とBPSDの違いは?

中核症状とBPSDの大きな違いには、以下の点が挙げられます。

中核症状 認知症になった高齢者にほぼ確実に表れる症状
BPSD 認知症になったからといって、必ず現れるわけではない
症状環境や周囲の人との関りにより、症状の悪化や改善が見られる

BPSD(行動・心理症状)は認知症の種類ごとに異なる

認知症には4つの種類があり、その種類ごとに現れやすいBPSDの症状が異なります。

具体的にどのような症状が出やすくなるのか、認知症の種類ごとに解説します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳細胞の萎縮・損傷が原因で進行する認知症です。

認知機能の低下や見当識障害、記憶障害が中核症状として現れるため、不安や抑うつ、妄想、徘徊、異食行為などの症状が現れやすい傾向にあります。

脳血管型認知症

脳血管型認知症は、脳梗塞や脳卒中などの脳血管障害が原因で進行する認知症です。

脳血管の詰まりや破れ、脳細胞の破壊が生じるため、感情コントロールがしにくく、暴力や暴言、介護拒否などの症状が現れやすい傾向にあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質が脳に溜まることで進行する認知症です。

自律神経に異常が生じやすく、幻視や幻聴、不安などの症状が現れやすい傾向にあります。

前頭側頭型認知症(ピック病)

前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉の萎縮・損傷が原因で進行する認知症です。

判断能力や認知機能の低下が顕著に見られるため、多動や徘徊、万引きを繰り返すといった異常行動などが現れやすい傾向にあります。

BPSD(行動・心理症状)の治療・対処方法

認知症のBPSDは適切な治療や対応を行うことで、症状を改善・緩和することができます。

ここでは、BPSDの症状が見られる認知症高齢者の治療・対処方法を3つご紹介します。

否定せずBPSDの症状を受け入れる

認知症の方のBPSDに困ったときは、まず認知症に関する理解を深めることが大切です。

BPSDを悪化させないためには、高齢者本人の言動を否定せず、温かく見守ることが必要になります。

また、高齢者の自尊心を損ねない対応を行うことで、症状の緩和・改善が目指せます。

環境を変化させない

認知症のBPSDは、環境の変化によるストレスで悪化しやすくなります。

引っ越しや部屋の模様替えは避け、本人が安心できる空間を作るようにしましょう。

また、思い出の品や懐かしの小物などを置くことも大切です。

認知症専門医による治療を受ける

BPSDの治療には、薬物療法と非薬物療法の2つがあります。

薬物療法では、抗不安剤や抗てんかん薬が主に処方されます。

また非薬物療法では、心理カウンセリングや作業療法、音楽療法が主に行われます。

いずれも認知症専門医の指示に沿って行うようにしましょう。

まとめ

BPSDは認知症になると必ず現れるという症状ではありません。

また、適切な治療や対応を行うことで、症状の改善・軽減が目指せます。

認知症の方のBPSDに戸惑いを感じたときは、認知症に関する理解を深め温かい目で高齢者の言動を見守ることで、双方のストレスが緩和できます。

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