認知症による「夕暮れ症候群」とは?介護士にできる対応法を解説

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皆さんが勤務する介護施設に、夕暮れ症候群になる認知症の利用者様はいませんか?夕暮れ症候群とは、認知症のある利用者様が夕方になると「家に帰る」と言いソワソワしてしまう症状です。家族が仕事・学校から帰って来る時間帯になると、起こりやすいと言われています。本記事では、介護士にできる夕暮れ症候群への対応方法についてご紹介します。

夕暮れ症候群とは?夕暮れ症候群の事例を紹介

認知症の人に起こりやすいといわれている、夕暮れ症候群。

精神医学での正式な診断名ではなく、夕方になると「家に帰る」と言いソワソワしたり徘徊したりする状態のことをいいます。

ここでは、介護施設でよくある夕暮れ症候群の事例を2つご紹介します。

毎日同じ時間帯になると起こすケース

グループホームに入居するAさんは、毎日夕方17時頃になるとソワソワし始めます。

「夫と娘が帰って来るから、夕飯の支度をしないと…」と言い、時には介護士の制止を振り切って外に出てしまうこともあるので注意が必要です。

介護士がAさんの話を聞くと、Aさんはこのように話します。
「夫と娘は警察官をしていて、もうすぐお腹を空かせて帰って来るの」

実際、Aさんのご主人は数年前に亡くなっており、娘さんは結婚を機に警察を引退して、スーパーのパート勤務をされています。

Aさんは、ご主人と娘さんが警察官として働いていた頃の記憶が強く残っているようです。

ご本人にも自覚があるケース

月に2回、1泊2日でショートステイを利用されているBさんは軽度の認知症があり、ショートステイを利用すると自分自身が夕暮れ症候群になることを自覚されています。

朝、介護施設に来ると、送迎担当の介護士にこう言います。
「明日までお世話になります。でも、私、夕方になるとちょっと頭がおかしくなるんです。わーわー言うことがあるかもしれませんが、よろしくお願いします」

そして、夕方16時頃になると、「私こんなところにいられない!帰ります!」と言い、介護施設から徒歩10分ほどの距離の自宅に帰ってしまうことがよくあります。

ご本人が夕暮れ症候群を自覚していても、実際に夕方になると感情コントロールが難しくなることもよくあることです。

ご本人の不穏症状が強い場合、ショートステイをやむなく中止する場合もあります。

夕暮れ症候群が起こる原因とは?

認知症になると、必ず夕暮れ症候群が起こるというわけではありません。

症状の出現頻度や程度には、個人差があります。

では「夕暮れ症候群」はどういう状況で、どんな人に現れるのでしょうか。

ここでは、夕暮れ症候群が起こる原因を3つご紹介します。

個人の生活歴・性格

長年会社勤めをしてきた人であれば、日中はずっと会社で仕事をします。

一方で、長年専業主婦をしてきた人であれば、日中はずっと家で家事や育児をします。

夕方以降は、仕事や子どもの学校が終わり、家族全員が揃って食卓を囲む時間帯。
家族の帰宅に合わせて夕飯の炊事をしなければなりません。

このようなこれまでの生活歴や、寂しがりといった個人の性格により、認知症になると夕暮れ症候群を起こすのです。

不安・精神疾患

認知症になると、これまでできていたことができなくなったり、大事なことを忘れてしまったりすることで、不安や混乱、戸惑いが生じやすくなります。

また、精神疾患による不安・焦燥・抑うつを抱える高齢者も多いです。

認知症や精神疾患による不安・混乱・焦燥・抑うつなどが原因となり、夕方になると不穏症状を起こすことが考えられます。

介護士との相性が合わない

認知症の利用者様に対し、高圧的な態度で接したり、不適切なケアや対応を行う介護士がいる場合、利用者様が不安を感じてしまいます。

「こんな怖い人がいるところにいたくない」という思いから、夕暮れ症候群や帰宅願望につながってしまうことが考えられます。

今一度、介護士の対応について見直すことが大切です。

介護士が行うべき夕暮れ症候群への適切な対応

認知症の利用者様に夕暮れ症候群の症状が現れたとき、介護士はどのような対応を行うべきでしょうか。

ここでは、介護士が行うべき「夕暮れ症候群」への適切な対応を3つご紹介します。

利用者様の話に耳を傾ける

夕方になり利用者様が「帰りたい」と言い、ソワソワし出したとき。

それが毎日同じことの繰り返しであっても、「またか…」と思わず、1回1回しっかりと「どうされましたか?」と声をかけ、利用者様の話や主張に耳を傾けることが大切です。

夕暮れ症候群が起こる原因・理由が利用者様の会話の中に隠れている場合があります。

「どこに帰りたいのか」「なぜ帰りたいのか」など、不安の原因を探るために、まずは利用者様の話を聞くようにしましょう。

否定せず受け入れる

夕暮れ症候群を起こしている利用者様の話は、現実や事実と異なる点が多々あります。

例えば、亡くなった配偶者が「もうすぐ仕事が終わって帰って来る」と思い込んでいたり、成人している息子・娘がまだ幼い子どもだと思い込んでいたりするのです。

そのような場合でも、「ご主人は3年ほど前に亡くなったとお聞きしていますよ」「息子さんは40代で一人暮らしをしているので、ご飯は自分で作れますよ」など、真実を伝えることは避けましょう。

利用者様の話は否定せず、「そうなんですね」「大変ですね」などの相槌を打ちながら受け入れることが大切です。

利用者様の話に共感する

夕暮れ症候群を起こし、「子どもがお腹を空かせて待っているから、帰ってご飯を作らないと」と言う利用者様Aさんがいるとします。

Aさんに対し、「今日はここに泊まることになっていますよ」と伝えても、かえって混乱を招いてしまいます。

「そうなんですね。早く家に帰りたいですよね」と、しっかり利用者様の気持ちに寄り添い、共感することが大切です。

利用者様の話に共感した上で、「毎日ご家族のご飯を作るのは大変ですよね。でも、日頃頑張っているからこそ、今日だけでもゆっくり休んでほしいってご主人が仰ってましたよ」というように、Aさんに納得してもらえる声かけを行います。

大切なのは、利用者様の気持ちを尊重しながら、納得してもらえる声かけを行うことです。

夕暮れ症候群による不安を取り除くための工夫

夕暮れ症候群を起こすと、落ち着きがなくなり、徘徊して転倒などの事故に遭ってしまうリスクが高まります。

夕暮れ症候群による不安を軽減し、落ち着いてもらうにはどうすればいいのでしょうか。

ここでは、夕暮れ症候群による不安を取り除く工夫ポイントを3つご紹介します。

安心できる環境を作る

1人でいると孤独感を感じるという方の場合、他の利用者様がいるフロアに移動してもらう。
他の利用者様がいると緊張してしまう方の場合、1人で過ごせる居室に移動してもらう。

このように、利用者様の性格や考え方に合わせて、臨機応変に対応を行います。

また、フロアであっても居室であっても、利用者様にとって馴染みのある物や思い出の品などを置いておくことで、安心感が高まります。

レクリエーション・余暇活動を充実させる

暇な時間があればあるほど、余計なことを考えて不穏症状につながってしまいます。

夕方頃にカラオケや生け花、造形、習字などの余暇活動をしたり、簡単な調理や掃除、洗濯などを手伝ってもらうことがおすすめです。

1つのことに熱中することで、夕暮れ症候群を防ぐことにつながります。

不安にならない生活習慣を考える

夕暮れ症候群が起こる時間は、おおよそ16時~18時くらいです。

その時間帯に退屈になってしまうと、「そうだ!家族が帰って来るんだった」と思いつき、家に帰ろうとしてしまいます。

夕暮れ症候群が起こりやすい時間帯に、散歩やレクリエーション、調理の手伝いなど、不安にならないための生活習慣を利用者様本人と一緒に考えるようにしましょう。

夕暮れ症候群への間違った対応

夕暮れ症候群を起こしている利用者様に対し、以下のような間違った対応を行うと、かえって不安症状がひどくなる可能性があります。

「また家に帰るって言い始めた」「この時間になるといつもだね」と、介護士同士で利用者様に対する文句を言う

 夕暮れ症候群を問題行動として捉え、該当の利用者様に叱責をする

 夕暮れ症候群が起こる利用者様を、夕方になると鍵付きの居室に閉じ込める

 「帰れないよ」と不安をあおるような声かけを行う

 「家に帰りたい」と主張する利用者様を無視する

夕暮れ症候群には、根本として強い不安があることが前提です。

そのため、「利用者様の行動を問題視する」「利用者様の行動を抑制する」「利用者様の話や主張を無視する」といった対応は逆効果となります。

まとめ

認知症の方は記憶障害や見当識障害、不安症状などを抱えているため、私たちが想像する以上に不安な気持ちで日々の生活を送っています。

特に、夕暮れ症候群の方は、今いる場所に不安や緊張を感じている可能性があります。

リラックスできる環境づくりを行い、利用者様が快適に過ごせる工夫をすることが重要です。

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