認知症高齢者に見られる「帰宅願望」とは?原因や対応方法を解説

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介護職が悩みがちな、認知症の利用者様による帰宅願望。帰りたい利用者様の気持ちを上手く落ち着かせるには、どのように対応や声かけを行えばいいのでしょうか。認知症の心理・行動症状の1つである「帰宅願望」が出現する原因や理由を知り、認知症の利用者様に寄り添った対応・声かけについて学びましょう。

認知症の帰宅願望とは?

認知症には「ご飯を食べたことを完全に忘れてしまう」「今いる場所が分からなくなる」といった症状が多く見られます。

また、突然「帰りたい」と自宅や介護施設を出て行ってしまい、近所をウロウロと徘徊するといった行動も時折見られがちです。

認知症の利用者様が「家に帰りたい」と落ち着かなくなったり、実際に家を出てしまったりする症状を帰宅願望といいます。

帰宅願望は認知症の周辺症状(心理・行動症状)の1つ。

帰宅願望は認知機能の低下や見当識障害が原因で、自分が今いる場所や一緒にいる人、現在の時刻などが分からなくなり、不安になることで起こりやすくなります。

認知症の帰宅願望が起こる理由

帰宅願望は一般的に、認知機能の低下見当識障害により自分が今いる場所や一緒にいる人などが分からなくなり、不安になることで起こると考えられています。

しかし「家に帰りたい」と思う理由や心理は人によってさまざまです。

ここでは、認知症の利用者様に帰宅願望が起こる共通した理由を解説します。

認知症の中核症状の影響

認知症には中核症状周辺症状(心理・行動症状)の2つの症状があります。

それぞれの具体的な症状は以下の通りです。

中核症状 ・記憶障害
・見当識障害(時間・人・場所などが分からなくなる)
・理解や判断力の著しい低下
・実行機能障害(料理や洗濯などの手順が分からなくなる)
・失語/失認識/失行(言語や物事の認識、行動の手順が分からなくなる)
周辺症状 失禁・介護拒否・帰宅願望・妄想・睡眠障害・異食・暴力暴言・幻覚錯覚・徘徊・不安症状・抑うつ

認知症の中核症状は、認知症を発症した人に必ず出現する症状です。

認知症の中核症状である記憶障害や見当識障害により、今いる場所や一緒にいる人が認識できないようになり、強い不安や混乱の末帰宅願望が生じる

このようなメカニズムで周辺症状が起こると考えられています。

環境や周囲の関わり方の影響

認知症の利用者様は認知機能の低下や見当識障害により、自分が今いる場所や一緒にいる人、現在の時刻などが認識できなくなっています。

そのため、「以前通っていたデイサービスから別のデイサービスに移った」「家族が自宅の大幅な模様替えを行った」ということでも混乱を起こしてしまいます。

環境の変化や周囲の人の配慮不足により「落ち着かない」「居心地が悪い」と感じ、家に帰りたいと訴えるのです。

個人の欲求や生活歴の影響

認知症の利用者様が「家に帰りたい」と話したとき、その理由を尋ねると「お腹が空いたから」「疲れて眠たくなったから」と言われることがあります。
食欲や睡眠欲が帰宅願望に直結するケースは多いです。

また、夕方に帰宅願望が出やすい人には、それ相応の理由があることも特徴です。

夕食の準備に追われる介護職員の様子を見て昔の記憶が蘇り、「夕飯の支度をするから」「子どもたちが学校から帰ってくるから」と帰宅を訴えるケースも多く見られます。

夕方になると落ち着きがなくなり、帰宅願望が現れる状態を夕暮れ症候群といいます。

帰宅願望に介護士はどう対応する?

毎日のように帰宅願望の訴えがあると、対応する介護職はイライラが溜まってしまうことも。

認知症の利用者様に「帰りたい」と言われたときは、イライラして声を荒げることなく冷静に、以下のような対処方法を実践してみましょう。

帰りたい理由に沿った適切な返答をする

軽度認知症の利用者様に「帰りたい」と言われたときは、「どこに帰るんですか?」「何か急ぎの用でもあるのですか?」と帰りたい理由や場所を尋ねてみましょう。

話をじっくり聞きながら、帰宅願望の理由や真意を探ります。

「家族の夕飯の支度があるから」「家の戸締りが不安だから」という理由であれば、「今日はデイサービスだから、息子さんが夕飯を作ると言ってましたよ」「今日、明日、明後日の3日ここに泊まるから、戸締りは娘さんがしたと言ってましたよ」というように、それぞれの理由に沿った適切な返答をして不安を取り除きます。

この方法は、デイサービスやショートステイを利用する軽度認知症の方におすすめです。

話を聞いた上で興味をそらす

中等度~重度認知症の利用者様に「帰りたい」と言われたときは、「どこに帰るんですか」「何か急ぎの用でもあるのですか?」と帰りたい理由や場所を尋ねてみましょう。

「家」という返答があれば、「家に帰りたいんですね。でも、今日はここに泊まる予定なんですよ」と伝え、話をそらします。

「もし良ければ、洗濯物を畳むのを手伝って頂けませんか?」と手伝いを頼んだり、雑談をしながら一緒に散歩したりすると、落ち着いてもらえます

この方法は、介護施設に入居する中等度~重度認知症の方におすすめです。

安心できる環境を作る

慣れない環境にいることで居心地の悪さを感じ、帰宅願望を訴えるケースが多くあります。

そのため、居室には本人が昔から使っていたタンスやクッションなどを置く、馴染みの多い小物・置物をフロアに置くなどの環境作りも非常に重要です。

また、本人が混乱しないよう、フロアに座席の定位置を設けることも効果的です。

環境の変化を最小限にし、安心できる馴染みの空間を作ることを心がけましょう。

帰宅願望のある認知症の方が安心できる声かけとは

認知症の利用者様から「家に帰りたい」と帰宅願望の訴えを受けたとき、具体的にどのような返事や声かけをすると落ち着いてもらえるのでしょうか。

不安を取り除き、安心してもらえる声かけの例をご紹介します。

「仕事をしてきた人生経験が長い」利用者様への声かけ

<利用者様の心理>
学校を卒業してから、定年まで仕事をしてきたという利用者様の場合、これまで勤めていた会社や自営業で経営してきた店などが気になってしまいます。認知症の見当識障害により、介護施設を自身がこれまで勤めていた会社だと思い込み、「いつ家に帰れる?」と1日に何度も介護職員へ尋ねる。自営業で経営していた店が気になり、「ちょっと店を見て来るよ」と自宅を出ようとする。仕事をしてきた人生経験が長い利用者様には、このような言動が見られがたです。
<適切な声かけ>
「お仕事お疲れ様です。今日の仕事はもう終わりですか?」
 →利用者様が過去に仕事で頑張った話や苦労話を引き出し、話題を転換する。
「店は息子さんが継いだってお聞きしましたよ。しばらくゆっくり休みませんか?」
 →ご家族から聞いた事実を伝え、安心してもらう。

「主婦・主夫をしてきた人生経験が長い」利用者様への声かけ

<利用者様の心理>
結婚してからずっと専業主婦を続けてきたという利用者様の場合、これまで支え続けてきた家や家族のことが気になってしまいます。普段落ち着いた生活を送っているのに、夕方になると落ち着きなくソワソワし、「早く帰らないと、子どもたちが帰ってくるの」と介護職員に何度も訴える。毎日夕方になると「家に帰るの」と言い、荷物をまとめる。主婦(主夫)をしてきた人生経験が長い利用者様には、このような言動が見られがちです。
<適切な声かけ>
「今から帰っても夜遅くなりますよ。お子さんは何時に帰ってくるんですか?」
 →まずは話を聞いて、気持ちを受け入れる。
「今日、お父さん(主人)が仕事で帰るのが遅くなるから、一晩ここで泊まってほしいって話してましたよ」
 →ご家族から聞いた事実と併せ、宿泊を頼まれている旨を明確に伝える。

認知症の帰宅願望への対応ポイント・注意点

認知症の利用者様から「帰りたい」と言われたときは、以下のような対応が求められます。

  • 帰りたい理由や話を聞く
  • 「帰りたい」という気持ちを否定せず受容する
  • 安心してもらえる馴染みの環境を作る

また、帰宅願望が強くなっている利用者様に対し、介護職が注意するべき言動には以下のようなものが挙げられます。

  • 無視や生返事など、混乱するような言動をしない
  • フロアの模様替えや配置換え、居室の変更など環境をむやみに変えない
  • 「帰りたい」という気持ちを問題行動と捉え、行動制限することはやめる

まとめ

帰宅願望がある方に否定をすると、さらなる不安症状やパニック、イライラが生じます。

不穏症状が悪化し、認知症が進行する可能性があるため、否定をすることは避けましょう。

帰宅願望の訴えを受けた時に大切なのは、「帰りたい」と言う理由や真意を探り、高齢者の気持ちに寄り添った対応を行うことです。

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