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認知症の行動・心理症状の1つに、「物盗られ妄想」と呼ばれる症状があります。「大切な着物が盗まれた」「お金を盗まれた」と、現実には盗まれていない物や金銭を盗まれたと思い込むことが、物盗られ妄想の特徴です。本記事では、物盗られ妄想が起こる原因と、介護士にできる対処方法について解説します。
■目次
物盗られ妄想とは、認知症の行動・心理症状(BPSD)の1つです。
「大切にしていた着物が盗まれた」「タンスに入れていたお金が盗まれた」など、実際には盗まれていない物や金銭を盗まれたと強く思い込むことが特徴です。
財布や現金、預金通帳以外にも、着物や宝石など、高価な物を盗まれたと家族や介護士に訴えるケースが多い傾向にあります。
物盗られ妄想は、認知症になると必ずしも現れる症状ではありません。
物盗られ妄想の出現には個人差があり、特に「初期のアルツハイマー型認知症を患っている女性高齢者」に多く現れる症状だといわれています。
>>>あわせて読みたい「認知症のBPSD(行動・心理症状)とは?症状や対応方法を解説」
なぜ、実際には盗まれていない物や金銭を「盗まれた」と強く思い込むのでしょうか。
また、物盗られ妄想が起こる高齢者の心理や精神はどのような状態なのでしょうか。
ここでは、物盗られ妄想が起こる原因や理由について解説します。
認知症は、加齢による脳の衰えや萎縮、脳血管障害の後遺症、脳にできた腫瘍などの脳に生じた障害が原因で発症します。
そのため、認知症患者の多くは記憶力や認知機能、思考力が低下している状態です。
記憶力や認知機能の低下を自覚している認知症初期の高齢者は、「大切な物が誰かに盗まれても、気づかないかもしれない」という不安を感じます。
自分で大切な物を忘れてしまったり、失ったりしてしまうことの不安と、思考力の低下が合わさり、物盗られ妄想を引き起こすと考えられています。
>>>あわせて読みたい「【介護士必見】認知症への正しい対応方法|よくある悩みと解決法」
●若い頃から心配性な性格で、些細なことにも不安を感じやすい性格だった。
●以前から自信がなく、常に誰かの支えを必要とするような性格だった。
●認知症を発症したことで、抑うつ症状や不安症状が見られるようになった。
このような、「元々の性格」もしくは「認知症による精神状態の悪化」が原因で、物盗られ妄想につながってしまうことも考えられています。
元々の性格や精神状態の悪化と、認知症による記憶力や認知機能の低下が合わさり、物盗られ妄想として怒りや不安を他者にぶつけてしまうのです。
物盗られ妄想は、「初期のアルツハイマー型認知症を患っている女性高齢者」に多く現れる症状だといわれています。
女性は大昔から、家庭や子どもを守るという役割を担ってきました。
そのため、社会に出て働くという役割を担ってきた男性に比べると、女性は後からいろいろなことを思い出し、不安になりやすい傾向にあります。
「きちんと戸締りをしただろうか?」「火元になるようなものは片付けただろうか?」と不安になって家に戻るという行動をとるのも、女性に多いといわれています。
女性高齢者は昔から家を守る役割を担ってきたからこそ、脳のつくりと認知症の症状により、大事な物や金銭を盗まれたと思い込んでしまうのです。
物盗られ妄想は基本的に、家族や介護士、訪問ヘルパーなど、普段介護をしている時間が長い人が「物やお金を盗んだ」と疑われることが多いです。
物盗られ妄想が生じることで、高齢者本人だけではなく、疑われている家族や介護士も混乱したり、戸惑ったりしてしまいます。
特に、物盗られ妄想や認知症に関する専門知識がない家族や親戚が「物やお金を盗んだ」と疑われることで、以下のようなトラブルに発展することが想定できます。
●物盗られ妄想が原因で、家族や親戚と喧嘩・揉め事になってしまう
●疑われている家族・親戚が落ち込みやいらつきを感じてしまう
●物盗られ妄想が生じている本人との接し方が分からず、家族や親戚が介護放棄(ネグレクト)をするようになってしまう
物盗られ妄想は、一度「嫁が盗んだ」と思い込むと、継続的にお嫁さんが大事にしていた物やお金を盗んだと言い続けることが多いようです。
そのため、物やお金を盗んだと疑われている家族・親戚が強い落ち込みや怒りを感じ、高齢者の介護を放棄してしまうというケースが少なくありません。
家族や親戚が物盗られ妄想に悩んでいるケースでは、専門知識を持った介護士が物盗られ妄想の原因や適切な対処方法について、ご家族に説明することが大切です。
認知症を患っている利用者様に物盗られ妄想が生じた場合、介護士にはどのような対処方法・対応を行うことが求められるのでしょうか。
ここでは、介護士にできる物盗られ妄想への適切な対処方法を3つご紹介します。
物盗られ妄想のみならず、認知症を患っている利用者様とのコミュニケーションで大切なのは、傾聴・受容・共感の3つです。
特に、現実とは異なることを妄想している利用者様に対しては、話を否定せずにじっくりと傾聴し、受け入れることが大切になります。
「私の財布を盗ったでしょ!」と利用者様が言うのに対し、「盗っていません!」と否定すると、かえって利用者様の混乱を招いてしまいます。
まずは冷静に、利用者様の話や訴えに耳を傾けるようにしましょう。
>>>あわせて読みたい「介護現場で必要な「傾聴」とは?3つの段階やポイントを解説」
利用者様が「部屋に置いてあった財布がなくなった! あの人が盗ったんだ」と、ほかの利用者様を指さして言ったとします。
このとき、まずは利用者様の話をじっくり傾聴するようにします。
そして、「なぜあの方が盗ったと思うのですか?」と、物盗られ妄想が生じている理由や根拠について確認することが大切です。
「あの人はいつも、部屋の中をウロウロしているから」と、利用者様なりの理由や根拠を聞き出せると良いでしょう。
利用者様同士の相性が悪い場合、フロアや居室を離すことが検討できます。
また、利用者様と介護士の相性が悪い場合は、別の介護士が対応することで、利用者様の不安や物盗られ妄想が緩和できる場合もあります。
>>>あわせて読みたい「【介護士必見】認知症に対するバリデーションとは?目的とは?
物盗られ妄想が生じている利用者様は、不安や怒りをあらわにし、落ち着きがなくなっている状態であることが大半です。
利用者様に落ち着いてもらうために、本人の興味関心が強いほかの話題に話を変えることをおすすめします。
また、「一緒に探しましょう」と声かけして散歩をしたり、タイミングを見計らってお茶やお菓子を勧めてみたりといった気分転換も大切です。
物盗られ妄想を治療するには、根本原因である認知症の治療が必要です。
しかし、現代の医療では、認知症を完治させる医療技術は解明されていません。
認知症や物盗られ妄想の治療は、症状の進行を遅らせたり、症状を緩和させたりする「緩和療法」を行うのが一般的です。
認知症や物盗られ妄想の緩和療法には、以下のようなものがあります。
薬物療法 |
精神科・心療内科などの専門医療機関に受診しましょう。 |
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作業・行動療法 |
認知症の専門知識がある介護士が主体となり、音楽療法や作業療法、レクリエーションなどを行います。 |
心理カウンセリング |
物盗られ妄想により、高齢者本人が感じている不安について、精神科や心療内科に在籍する臨床心理士が聞き取りを行います。 |
これらの治療を行うためには、まず、専門医による認知症の診断やアドバイスが必要です。
物盗られ妄想や、それ以外の認知症の症状が現れた場合、できる限り早期に精神科や心療内科などの専門医療機関を受診することが大切です。
>>>あわせて読みたい「介護施設でも実践できる回想法|認知症への効果や進め方について」
認知症の発症や物盗られ妄想の出現には、利用者様とそのご家族が強い不安や戸惑いを感じるケースが少なくありません。
介護士には、利用者様とご家族に寄り添い、適切なアドバイスをすることが求められます。
日頃から、認知症や物盗られ妄想に関する専門知識を身に付けておくようにしましょう。
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