お役立ち情報
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高齢者虐待は、なぜ起こるのでしょうか。年々高齢化が進んでいる日本では、自宅や介護施設、サービス付き高齢者向け住宅など、介護を必要とする高齢者の住まいが多様化しています。一方で、高齢者虐待の増加が問題となっていることも1つの現状。本記事では、高齢者虐待が起きてしまう原因と、加害者の心理状態について解説します。
■目次
高齢者虐待と聞くと、介護者が高齢者を殴る・蹴るといった身体的虐待をイメージしがちですが、身体的虐待だけが全てではありません。
高齢者虐待には「身体的虐待」「精神的・心理的虐待」「介護放棄(ネグレクト)」「経済的虐待」「性的虐待」の5つに分類されます。
ここでは、高齢者虐待に該当する5つの行為の定義について解説します。
高齢者への「身体的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 高齢者に対し、殴る・蹴るなどの暴力を振るう
■ 高齢者やそのご家族に同意を得ることなく、不必要な身体拘束を行う
■ 「ダメ!」「やめて!」などの言葉を使い、高齢者の行動を制限する
殴る・蹴るなどの暴力行為をしていなくても、言葉を使って高齢者の行動を制限することも、身体的虐待に該当します。
また、身体拘束においては、「ベッドからの転落を防ぐため」「尿バルーンの自己抜去を防ぐため」など、正当な理由があり、高齢者本人やご家族の同意を得ている場合は身体的虐待に該当しません。
高齢者への「精神的・心理的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 「バカ」「こんなこともできないの?」など、精神的に傷つく言葉を投げかける
■ 馬鹿にするような呼び方で呼んだり、幼児言葉を使って接したりして、高齢者の尊厳を踏みにじる
■ 高齢者の言うことを完全に無視する
精神的・心理的虐待は、介護者に精神的な疲れが溜まっていることが原因で起こります。
言葉は目に見えないため、精神的・心理的虐待の発見は遅れてしまいがちです。
高齢者への「介護放棄(ネグレクト)」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 入浴介助や排泄介助を行わず、不衛生な状態のまま放置する
■ 食事や水分を与えず、脱水状態になるまで放置する
■ 自宅に閉じ込め、外出したり、地域の人と交流したりする機会を与えない
また認知症を患っている高齢者の中には、「私のことは放っておいて」と介護を拒否し、自分自身のことを放置してほしいと望む方も多いです。
しかし、介護者側が「分かった。じゃあ、何もしない」と高齢者の希望を汲んでしまうと、介護放棄(ネグレクト)に該当するため要注意です。
認知症ケアの知識を身につけ、適切な声かけや対応をすることが求められます。
>>>あわせて読みたい「【介護士必見】認知症への正しい対応方法|よくある悩みと解決法」
高齢者への「経済的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 高齢者の同意なく、現金や預金を勝手に使う
■ 高齢者が所持する現金や預金を勝手に取り上げ、生活に必要なお金を渡さない
認知症により、自分自身で金銭管理をすることが難しい高齢者の場合、家族や任意後見契約を結んだ司法書士が金銭を預かります。
その際は、預かったお金を勝手に使ったり、勝手に取り上げたりするのは厳禁です。
高齢者への「性的虐待」とは、具体的に以下の行為を指します。
■ 高齢者の身体を不必要にベタベタと触ったり、わいせつな行為をする
■ 「失禁した罰」と称し、高齢者を裸にして放置する
高齢者の介護では、入浴や排泄、着替えの介助など、高齢者の身体に直接触れて行う身体介護が欠かせません。
身体介護を行う際には、高齢者のプライバシーを確保し、高齢者の尊厳を損なわない対応を行うことが重要です。
高齢者が住み慣れた自宅で、高齢者の家族が介護を担う在宅介護。
身内であるからこそ心理的・物理的な距離感が近くなってしまい、その延長線上で虐待が発生してしまうのです。
訪問介護職をはじめ、利用者様やご家族をサポートする介護職は、身内による在宅での虐待がないか観察する必要があるでしょう。
在宅介護で虐待が起こる背景には、以下のような原因が挙げられます。
■ 入浴介助や排泄介助などによる、介護者の身体的な疲れ・負担
■ 自宅で1日中高齢者を見守ることによる、介護者の精神的な疲れ・ストレス
■ 介護による退職や、介護費用がかかることなどの金銭的な不安
在宅介護で起こる虐待で最も多いのが、高齢者を殴る・蹴るなどの「身体的虐待」です。
続けて、暴言や無視などの「精神的虐待」、高齢者の介護を放棄する「介護放棄(ネグレクト)」が起こりやすい傾向にあります。
なお、厚生労働省が公表した調査結果によると、在宅介護の虐待者の内訳は以下の通りです。
被害者の息子:39.9%
被害者の夫:22.4%
被害者の娘:17.8%
被害者の妻:7.0%
被害者の孫:3.0%
被害者の息子嫁:2.8%
在宅介護で虐待をする人の半数以上が、男性の介護者です。
核家族化が進んでいる現代社会では、家事や人の世話に不慣れな男性が介護を担うことになり、誰にも相談できず虐待に発展するケースが増加しています。
参照:厚生労働省|令和 2 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
高齢者への虐待が起こるのは、在宅介護だけではありません。
悲しいことに、介護サービスを提供している介護施設・介護事業所でも介護職による虐待が発生している事実があります。
介護施設・介護事業所で虐待が起こる背景には、以下のような原因が挙げられます。
■ 新人介護職の介護に関する専門知識・専門技術の不足
■ 間違った方法で入浴介助や排泄介助を行うことで引き起こす腰痛や肉体的負担
■ 人手不足で休暇が十分にとれないことによる、疲れや精神的ストレス
介護職が起こす虐待で最も多いのが、暴力や身体拘束などの「身体的虐待」です。
続けて、暴言や無視などの「精神的虐待」、利用者の介護を放棄する「介護放棄(ネグレクト)」が起こりやすい傾向にあります。
なお、厚生労働省の調査結果によると、介護施設に多い虐待の種別の内訳は以下の通りです。
なお、虐待を受けた高齢者は認知症を患っているケースが多いです。
認知症によるコミュニケーションや意思疎通の難しさに対し、介護職がストレスを感じて虐待を行うケースが増加傾向にあります。
参照:厚生労働省|令和 2 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
在宅介護や介護施設で起こってしまう高齢者虐待。
どうすれば、高齢者虐待を未然に防止することができるのでしょうか。
ここでは、在宅介護や介護施設で高齢者虐待を防止する方法を3つご紹介します。
認知症による意思疎通の難しさや、寝たきりの方を全介助する負担から介護者にストレスが溜まり、虐待へと発展します。
そのため、介護施設の介護職のみならずご家族であっても、介護や認知症ケアに関する専門知識を身につけることが大切です。
近年では、介護職を対象とした研修や家族介護者を対象とした「家族介護者の会」を実施・開催している団体や企業が増えています。
虐待を起こさないためにも、介護に関する正しい知識を身につけましょう。
高齢者虐待が起こりやすい在宅介護と介護施設、それぞれの介護者が介護の悩みやストレスを1人で抱え込んでいます。
虐待を起こさないためには、在宅介護をしているご家族には介護施設に相談してもらうよう促し、介護職は家族介護者と相談内容を共有することが大切です。
ご家族と介護職が連携を図ることで、適切な介護方法を伝えることができるでしょう。
「同じ介護施設で働く職員が利用者様に虐待をしているかもしれない」
「利用者様のご家族が自宅で虐待をしているかもしれない」
このような気づきがあれば、すぐに上長や専門機関へ相談しましょう。
専門機関の場合は地域包括支援センターや市区町村の役所、弁護士などへの相談がおすすめです。
高齢化社会の進行に伴い、在宅や介護施設などで要介護高齢者の介護を担う家族介護者の人数や、介護施設の数が増加しています。
それと同時に、高齢者虐待の通報件数も増加傾向にあることから、行政は「高齢者虐待防止法」を制定しました。
「高齢者虐待防止法」とは、高齢者虐待の早期発見・早期対応を目的として制定された法律です。
介護施設・介護事業所の運営者及び介護職は、介護現場や在宅介護での高齢者虐待を見つけ次第、市区町村へ通報しなければならないという決まりを設けています。
さらに、通報者が虐待の加害者からクレームを受けたり、揉め事に巻き込まれたりしないよう、通報者を守るための決まりも制定されています。
介護や高齢者虐待なんて無縁の話だと思っていても、いつ大切な家族に介護が必要になるかは予測不可能です。
家族に介護が必要になった時は地域の介護相談センターに、介護の仕事をしていて疲れを感じたときは介護現場の先輩に、介護の悩みを積極的に相談するようにしましょう。
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