介護職員が取得できる「処遇改善加算」とは?必要な要件を解説

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介護職員が処遇改善加算を取得するためには、どのような要件が必要になるのでしょうか。基本給に上乗せされる処遇改善加算とは、介護職員の賃金を向上させ、人手不足の解消を目指す制度です。しかし、介護職員が処遇改善加算を取得するには、勤め先の施設や事業所が特定の要件を満たしている必要があります。本記事では、処遇改善加算の金額や、取得に必要な要件について解説します。

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介護職員が取得できる処遇改善加算とは?

介護職員が取得できる介護職員処遇改善加算には、介護職員当特定処遇改善加算と介護職等ベースアップ等支援加算の2種類があります。

それぞれ、どのような制度なのかについてご紹介します。

介護職員処遇改善加算

処遇改善加算の対象者は介護職員のみです。

国から介護職員処遇改善加算を受け取るためには、介護施設・介護事業所が以下のキャリアパス要件・職場環境等要件を満たす必要があります。

【キャリアパス要件】
職位・職責・職務内容などに応じた任用要件と賃金体系を整備すること
資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保すること
介護職の経験もしくは資格に応じて昇給する仕組または一定の基準に基づき定期的に昇給を判断する仕組みを設けること

【職場環境等要件】
賃金改善を除く、職場環境などの改善

また、勤め先の施設・事業所がどの要件を満たしているかによって、介護職員に支給される処遇改善加算が異なります。

加算(Ⅰ)加算(Ⅱ)加算(Ⅲ)

キャリアパス要件のうち①・②・③すべてと職場環境等要件を満たす

介護職員1人当たりの手当額
月額3.7万円相当

キャリアパス要件のうち①・②と職場環境等要件を満たす

介護職員1人当たりの手当額
月額2.7万円相当

キャリアパス要件のうち①または②と職場環境等要件を満たす

介護職員1人当たりの手当額
月額1.5万円相当


参照:処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)|厚生労働省

介護職員等特定処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算の対象者は、以下の通りです。

経験・技能のある介護職員
そのほかの介護職員
そのほかの職種

介護職員等特定職改善加算を受け取るためには、施設・事業所が以下の要件をすべて満たす必要があります。

処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
処遇改善加算の職場環境等要件に監視、複数の取り組みを行っていること
処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページへの掲載などを通じた見える化を行っていること

参照:厚生労働省処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)|厚生労働省

介護職員等ベースアップ等支援加算

介護職員等ベースアップ等支援加算の対象者は介護職員です。

しかし、施設・事業所の判断によって、介護職員以外にこの処遇改善を支給することも認められています

介護職員等ベースアップ等支援加算を受け取るためには、施設・事業所が以下の要件をすべて満たす必要があります。

処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の3/2は介護職員等の基本給に加えて介護職員等ベースアップ等支援加算を使用すること

参照:厚生労働省処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)|厚生労働省

 

介護職員処遇改善加算に必要な環境等要件とは?

先ほどご紹介した介護職員処遇改善加算に必要な職場環境等要件として、「賃金改善を除く、職場環境などの改善」と記載しました。

しかし実際には、区分と具体的な内容が細かく定められています。

ここからは、職場環境等要件の区分と具体的な内容についてご紹介します。

入職促進に向けた取り組み

法人や事業所の経営理念やケア方針、実現のための施策や仕組みなどを明確化する
事業者同士の採用・人事ローテーションや研修のための制度を構築する
幅広い採用を実現する

・別業界からの転職者
・主婦
・中高年齢者
・経験者
・有資格者
職業体験の受け入れや地域行事への参加など、地域への自己啓発活動を行う

資質の向上や キャリアアップに向けた支援

専門性の高い研修の提供や、キャリア相談の実施
定期的な研修の受講や職場内での勉強会、職員同士での業務評価などを行う

両立支援・多様な働き方の推進

プライベートと仕事の両立を目指す者のための、休業制度の充実もしくは事業所内託児施設の併設を行う
職員の事情に応じた勤務シフトの導入や、希望に応じた雇用形態の変更を行う
有給休暇が取得しやすい職場環境の整備を行う
業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置などの充実を図る

腰痛を含む心身の健康管理

職員の負担軽減のための介護機器の導入を行い、職員の腰痛予防を実施する
短時間勤務労働者も受診可能な健康診断・ストレスチェックを実施する

生産性向上のための業務改善の取り組み

ICTの活用や見守り機器・介護センサーなどの導入による業務量の縮減を図る
高齢者の介護業務や、経理・労務などを行う者について役割分担を明確化する
整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとった5S活動による職場環境の整備を行う
業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫による情報共有作業の軽減を行う

やりがい・働きがいの醸成

個々の気づきをふまえた勤務環境や業務内容の改善を行う
地域の児童や生徒、住民との交流の場を設ける
利用者本位のケア方針や介護保険制度、法人の理念などを学ぶ機会を定期的に提供する
ケアの好事例や、利用者からの謝意などの情報共有をする機会を提供する

参照:処遇改善に関する加算の職場環境等要件|厚生労働省

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介護職員等特定処遇改善加算の仕組みとは?

介護職員等特定処遇改善加算は、優れた経験や技能をもつ介護職員に対して、重点的に実施されている制度です。

別業界と並ぶ賃金水準を目指して、介護職員の基本給に賃金を加算することを目的としています。

介護職員等特定処遇改善加算の概要は、以下の通りです。

優れた経験・技能をもつ職員に重点化を図りながら、介護職の更なる処遇改善を進める
他の介護職などの処遇改善を図れるよう、柔軟な運用を行うこと
同一の介護サービス事業所において勤続年数10年以上の介護福祉士については、月額平均8万円相当の週改善を行うことを算定根拠とする

以前まで、介護保険サービスを利用する方の自己負担額を軽減するために、国が2000億円の公費を介護サービス費にあてていました。

このたび、さらなる処遇改善を行うことを目的として、国の公費を1000億円程度追加することが決定されました。

これらの公費は主に、国民の介護保険料の支払いや、国の予算案見直しにより準備されています。

参照:介護職員等特定処遇改善加算の仕組み|厚生労働省

 

介護職員等ベースアップ等支援加算の仕組みとは?

介護職員の処遇改善については、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえ、令和4年10月以降から収入を月額平均9000円程度引き上げる措置を講じています。

介護職員等ベースアップ等支援加算の詳細は、以下の通りです。

【加算額】
介護職(常勤)1人あたり月額平均9000円の賃金引き上げ

【取得要件】
処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の3分の2は介護職員の基本給に加えて介護職員等ベースアップ等支援加算を使用すること

【対象職種】
介護職員
事業所の判断により、ほかの職員に使用することも可能

【申請方法・報告方法】
各事業所において、都道府県などに介護職員・そのほかの職員の月額賃金改善額を記載した計画書を提出し、賃金改善期間経過後、計画の実施報告書を提出する

参照:介護職員等ベースアップ等支援加算の仕組み|厚生労働省

 

【最新版】2024年時点での処遇改善加算支給実績

2024(令和6)年時点で報告されている、処遇改善加算の実施状況は以下の通りです。

支給年度/月令和2年4月令和2年10月令和3年4月令和3年後10月令和4年4月令和4年10月令和5年4月令和5年10月
介護職員処遇改善加算 92.4% 92.9% 93.2% 93.3% 93.4% 93.8% 93.8% 94.3%
介護職員等特定処遇改善加算 69.6% 71.2% 73.5% 73.9% 75.1% 75.9% 77.0% 77.7%
介護職員等ベースアップ等支援加算 85.4% 92.1% 93.4%

参照:「介護職員の処遇改善に関する加算等の取得状況|厚生労働省

 

まとめ

介護職員が取得できる処遇改善の支給率は、月ごとに多少の差はあるものの、年々増加傾向にあります。

処遇改善手当の支給率や支給額が上がることで、「介護職は給料が安いもの」というイメージも払拭できるでしょう。

処遇改善加算は、介護人材を募るためにも欠かせない重要な手当といえます。

また、介護職員として働く方の中には「家庭の事情をわかってもらえない」「有給休暇がきちんと取れない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

そのような方は、転職を視野に入れてみてもいいかもしれません。

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筆者プロフィール
りんか
保有資格:介護職員初任者研修/介護福祉士
経歴:福祉系高等学校にて介護福祉士の資格を取得後、特別養護老人ホームと訪問介護事業所に各2年勤務。高齢者グループホーム・デイサービス・障がい者支援センターでの実習・ボランティアの経験と介護事務の経験もあり。現在は介護福祉士Webライターとして活動中。
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