介護現場におすすめの園芸療法とは?実施方法やメリットを紹介

更新日:

介護施設で園芸療法を取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。近年、園芸療法を取り入れている介護施設が増えてきています。植物に触れることで心が癒され、認知症やうつ病などの症状が改善する効果が期待されています。本記事では、介護現場で園芸療法を行う方法や効果・メリットについてご紹介します。



介護現場で行われている園芸療法とは?

園芸療法とは、植物に触れることを通じて、心や身体の健康増進を図る療法です。

認知症やうつ症状など、さまざまな病気や障がいをもつ方が入居する介護施設では、レクリエーションの一環として園芸療法が取り入れられています。

介護施設で行われている園芸療法の一例は、以下の通りです。

お花見会や森林浴など、自然の植物に触れる鑑賞活動

フラワーアレンジメントや押し花クラフトなどの、植物を用いた創作活動

花や観葉植物、野菜を育てる園芸活動

園芸療法の目的

介護現場ではどのような目的があり、園芸療法を実施するのでしょうか。

介護現場で園芸療法を行う主な目的は以下の5つです。

利用者様のQOL(生活の質)を向上させる

植物を育てることで、外に出る機会を増やす

運動不足の解消や、筋力低下の防止を目指す

利用者様の社会性を回復させる

利用者様の意欲向上や生きがいづくりにつなげる

動物療法(アニマルセラピー)との違い

園芸療法に似たものに、「動物療法(アニマルセラピー)」があります。

動物療法(アニマルセラピー)とは、犬や馬、イルカなどの動物と触れ合うことで癒し効果やストレスの軽減を図る療法です。

園芸療法と動物療法の大きな違いは、対象物(植物や動物)に触れたときの反応です。

対象物が動物(犬)である場合、触れることでしっぽを振ったり、首や足を動かしたりと、植物に比べて動作が急激かつ大きいことが特徴です。

一方で、対象物が植物である場合、ゆっくりと中長期的に成長を楽しむことができます。

園芸療法は、動物の俊敏な動きに驚いてしまう方や、認知症による不安・抑うつ症状が強い方に適しています

>>>あわせて読みたい「介護施設でアニマルセラピーを行う効果とは?メリットや注意点も」

 

介護施設で園芸療法を取り入れる3つのメリット

園芸療法を取り入れることには、具体的にどのような嬉しいメリットがあるのでしょうか。

ここからは、介護施設で園芸療法を取り入れる3つのメリットをご紹介します。

五感が刺激される

植物に触れたり、植物を育てたりすることで、五感がすべて刺激されます。

視覚:植物の成長や四季の変化を目で見る

聴覚:風の音や木々のせせらぎ、鳥や虫の鳴き声を耳で聴く

嗅覚:花や新緑の香りを楽しむ

味覚:野菜や果物などの収穫物を味わう

触覚:土や水、植物や実の手触りを楽しむ

五感が刺激されることで、認知症の予防に高い効果があるといわれています。

認知機能の低下を防ぎたいと希望する高齢者の方には、特に最適です。

リラックス効果が得られる

植物は二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するため、「自然の空気清浄機」といわれています。

また、植物の葉が持つ「蒸散作用」により、人が快適に過ごせる湿度を保ってくれます。

ほかにも、マイナスイオンの放出や目に優しい緑色など、植物には人がリラックスできるさまざまな作用・効果が備わっているのです。

園芸療法を定期的に行うことで、リラックス効果や安眠効果を得ることができます

介護現場でのコミュニケーションが円滑になる

利用者様一人ひとりとゆっくりコミュニケーションを図る時間がなかなか取れないという施設でも、1日数十分程度、園芸療法を行う時間を作ってみましょう。

介護士やほかの利用者様、地域のボランティアの方など、さまざまな人とコミュニケーションを図りながら、植物の成長を楽しむことができます。

園芸療法を行うことで、利用者様同士の交流やコミュニケーションを円滑に行うことができるのです。

 

介護現場での園芸療法の実施方法

ここからは、介護現場で園芸療法を行う際の手順をご紹介します。

これから園芸療法を始めようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

準備

準備とは、ただ単に土や鉢植え、種などの園芸用品を買いそろえることではありません。

対象者の人生歴や生活歴を把握したうえで、簡単な作業を勧めてみることで反応を伺います

対象者が嫌がっているにも関わらず、無理強いすることは禁物です。

また、安心して園芸療法を実施するために、事前に対象者とのコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが重要です。

実施と評価

園芸療法は、一度行えば終わりというものではありません。

植物の成長や対象者の体調の変化などに合わせて柔軟に内容を変更していく必要があります。

事前に実施日の計画作成を行い、実施した後は反省点や今後の改善点について振り返りを行います。

対象者がより楽しく、園芸療法の効果を実感できるよう、修正を繰り返しながら進めることが重要です。

自立のサポート

園芸療法の最終目的は、対象者が自発的かつ主体的に園芸を楽しめるようになることです。

常に実施者が寄り添うのではなく、対象者が「自分でできた」と達成感を味わうことができるよう、少し離れた場所から見守りや必要なサポートを行います。

 



園芸療法の専門職「園芸療法士」とは?

園芸療法は無資格・未経験の介護士でも実施することが可能です。

しかし、園芸療法に関する知識がなければ、よりストレス解消やリラックス効果などを十分に発揮することができません。

園芸療法の専門知識が学べる資格に、日本園芸療法学会が認定する「園芸療法士」という資格があります

ここからは、園芸療法士の取得方法をご紹介します。

園芸療法士の資格取得方法

日本園芸療法学会が認定する「園芸療法士」の資格取得ルートは、以下の3つです。

認定校 ・IWAD環境福祉専門学校/東京農業大学への通学が必要
・200時間以上の園芸療法科目受講+500時間以上の園芸療法実習で、同学会が認定する「上級園芸療法士」による指導を受ける
・「日本園芸療法学会 認定園芸療法士」の認定試験合格で資格取得
認定講座 ・恵泉女学園大学/千葉大学/日本園芸療法研究会/園芸療法研究会西日本への通学が必要
・200時間以上の園芸療法科目受講+500時間以上の園芸療法実習で、同学会が認定する「上級園芸療法士」による指導を受ける
・「日本園芸療法学会 認定園芸療法士」の認定試験合格で資格取得
認定校・認定講座以外 ・淡路景観園芸学校/他団体等への通学が必要
・時間規定なしの園芸療法科目受講+500時間以上の園芸療法実習で、同学会が認定する「上級園芸療法士」による指導を受ける
・「日本園芸療法学会 認定園芸療法士」の認定試験合格で資格取得

引用:日本園芸療法学会「園芸療法士になるには」

通信教育で資格取得できる教育機関や、オープンキャンパスを開いている教育機関もあるため、募集要項について詳しく知りたい方は、各機関のホームページをご覧ください。

 

園芸療法が抱えている課題

一方で、園芸療法にはいくつかの課題があるのが現状です。

ここからは、園芸療法が抱えている課題を2つご紹介します。

専門知識を持った「園芸療法士」の不足

介護現場では、園芸療法の専門知識を持った園芸療法士の雇用数が非常に少ないことが課題となっています。

園芸療法士が不足している主な原因は、介護業界の人手不足です。

高齢化の進行により要介護高齢者が急増する一方で、介護の担い手が不足しています。

深刻な人手不足問題を抱える介護現場では、介護士や看護師、リハビリ職の雇用を優先しているため、園芸療法士の雇用にまで手が回っていないのです。

園芸療法に関する情報の不足

園芸療法士の不足に比例して、園芸療法に関する調査結果も不足しています。

そのため、園芸療法を行うためのノウハウや、どのような効果が期待できるのかなどについて、十分な情報源が揃いにくいというのが現状です。

園芸療法はまだまだ発展途上で、根拠に基づいた正確な研究結果が出揃っていないことが課題となっています。

 

まとめ

園芸療法にはリラックス効果や認知機能の低下・防止など、介護を必要とする高齢者にとって嬉しい効果が豊富にあります。

しかし、園芸療法の専門知識を持つ「園芸療法士」の人数はまだまだ少ないということが課題とされています。

園芸療法に興味がある介護士の方は、ぜひ園芸療法士の資格取得を検討してみてください。

 

筆者プロフィール
りんか
保有資格:介護職員初任者研修/介護福祉士
経歴:福祉系高等学校にて介護福祉士の資格を取得後、特別養護老人ホームと訪問介護事業所に各2年勤務。高齢者グループホーム・デイサービス・障がい者支援センターでの実習・ボランティアの経験と介護事務の経験もあり。現在は介護福祉士Webライターとして活動中。
>>>この筆者の記事一覧

職場の選び方に迷ったら【介護求人ラボ】

【介護求人ラボ】では専門のアドバイザーがあなたの希望に合った求人をご提案いたします。職場選びに迷った際はぜひ【介護求人ラボ】へご相談ください!入職までしっかりとサポートさせていただきます。

お電話で無料お問い合わせ

簡単!WEBで無料お問い合せ

介護系ハイキャリア転職なら【介護求人ラボ+】

介護求人ラボ+(介護求人ラボ プラス)は、介護系管理職(管理者・施設長)限定のハイキャリア向け転職サービス。ハイキャリア専門のアドバイザーが、次のステージに挑戦するサポートを提供いたします。「自分の市場価値が知りたい」「現状のキャリアで管理職は可能か?」などの相談からでもOK!まずはお気軽にお問い合せください。

【完全無料】60秒で簡単登録!


Instagram
X(Twitter)にてお役立ち情報更新中!
フォロー・いいね・コメントよろしくお願いします♪