介護施設の緊急時対応マニュアルとは?マニュアル作成方法を紹介

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介護施設では、緊急時の対応についてのマニュアルを用意しておくが必要不可欠です。介護施設での仕事において、いつ緊急事態や事故などが起きるか分からないというリスクが付き物です。新人介護士の中には、「まだ緊急時に遭遇したことがないため、適切に対応できるか分からない」という不安を抱えている方も多いはずです。本記事では、介護施設の緊急時対応と適切なマニュアル作成について徹底解説します。



介護施設で起こる「緊急時」とは?

介護施設では「緊急時」と呼ばれるアクシデントが起こることがよくあります

緊急時と聞くと、地震や津波などの自然災害や火災をイメージする方も多いのではないでしょうか。

しかし、介護施設で起こる「緊急時」は自然災害や火災だけではありません。

以下のような状況を介護施設では「緊急時」と認識しています。

介護施設内での感染症の集団感染(クラスター発生)

利用者様の転倒や転落、窒息、誤嚥などの介護事故

利用者様の急な心肺停止や、意識レベルの低下

地震や津波などの自然災害

介護施設の火災 など

介護施設で起こる「緊急時」とは、急なアクシデントが発生し、迅速な判断や対応が求められる状況全般を指します。

介護施設では日頃から、予測不可能な緊急時に備えてリスクマネジメントを講じたり、緊急時対応のマニュアルを作成しておくことが重要です。

>>>あわせて読みたい「【介護職員必見】介護事故が起こったときの対応方法、原因と対策」

 

介護施設での「緊急時」はなぜ起こるのか?

介護施設で頻繁に起こる緊急時には、以下の2つが挙げられます。

利用者様の転倒や転落、窒息、誤嚥などの介護事故

利用者様の急な心肺停止や、意識レベルの低下

これらの緊急時が頻繁に起きやすいといわれている主な理由として、利用者様の加齢による心身機能の低下が挙げられます。

ここからは、介護施設で緊急時が起こる理由・原因を3つご紹介します。

利用者様の心身状態の変化

人は高齢になると、手足や体幹の筋力が低下したり、心臓や肺、胃腸などの臓器の働きが弱くなったりします。

また、高齢者の中には、糖尿病や高血圧などの慢性疾患を抱えている方も多いです。

そのため、高齢者の多くは急な気候の変動や、血圧・血糖値などの急激な変化により、突然心不全や意識レベルの低下を引き起こすリスクを持っているのです。

特に心肺停止状態に陥ったり、食べ物を窒息したりと一刻を争う緊急時には、介護士の的確な判断や対応が必要になります。

薬の副作用

高齢者の多くは、糖尿病や高血圧、認知症、精神疾患などの複数の薬を同時に服用しています。

多い方だと、1回の服薬で10錠以上の錠剤を飲む方もいます。

しかし、薬には相互作用があるため、医師に現在服用している薬を伝え忘れていたり、誤った服用方法をしたりすると、強い副作用が生じる場合があります。

誤った薬の服用方法により、頭痛や嘔吐などの体調不良や、急な意識レベルの低下を引き起こしてしまうのです。

>>>あわせて読みたい「命に関わる事故を防ぐ!介護施設の誤薬防止策を徹底解説」

環境の変化によるストレス

高齢者は病院での入院生活や介護施設への入居など、居場所を転々とする機会が多くあります。

特に、認知症やうつ症状がある高齢者にとって、環境の変化は強いストレスになります

環境の変化にうまく順応できず、ストレスが蓄積されたことが原因となり、脳梗塞の発症や認知症の進行などの心身状態の悪化につながってしまうのです。

 

介護施設で作成するべき緊急時対応マニュアル

介護施設でよく起こる緊急時に備えて、緊急時対応マニュアルを作成しておくことが重要です。

ここからは、マニュアルに記載するべき内容を2つご紹介します。介護施設でのマニュアル作成時に是非、お役立てください。

緊急時に見られる「症状」と「応急処置」の方法

緊急時には、嘔吐や呼吸困難、激しい頭痛など、利用者様に普段見られない症状が起こります。

早急に救急車を要請する必要がありますが、救急隊員の到着までに介護士が行うべき応急処置について記載しておくことが大切です。

マニュアルに記載する内容の一例は、以下の通りです。

症状適切な対応方法・応急処置
嘔吐・吐血 嘔吐の原因は髄膜炎や脳腫瘍、便秘、食中毒、薬の副作用、熱中症などさまざまです。感染症による嘔吐の可能性もあるため、マスク・使い捨て手袋・エプロンなどの感染対策を行ってから吐物を処理しましょう。吐物が口に残っている可能性もあるため、利用者様に横向きに寝てもらい、ガーグルベースンを使用して口腔内を清潔にします。吐血の場合は、食道や胃、十二指腸から出血している可能性が非常に高いため、嘔吐と同様に感染症対策を行ってから吐物を処理します。400ml以上の大量吐血や、意識レベルの低下が見られた場合は、救急車を要請しましょう。

窒息による呼吸困難

食べ物が喉に詰まって呼吸困難を起こした場合、顔や唇が紫色になり、声や咳が出なくなります。「背部叩打法」や「ハイムリック法(上腹部圧迫法)」などで応急処置を行うか、吸引器で詰まった食べ物を除去します。意識が回復しない場合は、AEDを使用して心肺蘇生を行い、同時に救急車を要請しましょう。

転倒による大量出血

利用者様が転倒して大量出血している場合、骨折が疑われます。感染症対策を行い、ガーゼやタオルで傷口を圧迫しましょう。手足に傷口がある場合は、心臓より上にあげます。出血量により、救急車を要請するか病院を受診するかを判断しましょう。
意識消失 意識消失を起こすと、呼びかけにも一切反応を示しません。糖尿病や高血圧、心疾患などが主な原因です。「〇〇さん、聞こえますか?」と大きな声で問いかけ、反応がない場合は救急車を要請しましょう。救急隊員が到着するまでの間、気道確保を行い、毛布などで全身を保温します。

激しい頭痛・胸痛

手足の麻痺や言葉のもつれ、発熱を伴った突然の激しい頭痛は脳出血や脳腫瘍などの可能性があるため、すぐに救急車を要請します。また、鋭い痛みを伴う胸痛は心筋梗塞や大動脈解離、狭心症の可能性があるため、頭痛と同様に救急車を要請しましょう。

 

緊急時対応の手順

緊急時対応に慣れていない介護士は特に、緊急時に遭遇すると慌ててしまい、迅速かつ適切な対応ができなくなってしまいます。

どの介護士でも統一した緊急時対応が行えるよう、手順書を作成することが大切です。

マニュアルに記載する手順書の一例は、以下の通りです。

❶状況の把握・確認
まずはなぜその状況が起きたのか、冷静かつ客観的に観察し、状況の詳細や利用者様に現れている症状、その原因について把握します。

❷安全確保
利用者様の苦痛や不安を軽減するための環境を整え、自分自身の感染症対策(マスクや使い捨て手袋、エプロンの着用)を行います。

❸的確な判断と速やかな対応
緊急時の対応方法や、容態急変時の応急処置については、日頃からマニュアルを熟読し、頭に入れておきます。緊急時には慌てず冷静に、その場の状況や利用者様の症状に沿った対応を判断して行います。必要に応じて、救急車の要請を行いましょう。

❹多職種間での「報告・連絡・相談」
緊急時の様子や対応内容など、多職種間で「報告・連絡・相談」を行い、情報を共有します。利用者様のご家族の方にも、緊急時の様子や対応内容、その後の様子を連絡します。

❺記録
緊急時の様子や利用者様の症状、行った対応内容などを詳細に記録します。必要に応じて「事故報告書」や「ヒヤリハット報告書」を記載し、行った対応内容について振り返りと反省を行います。

ほかにも、緊急時の連絡先として主治医や看護師、ご家族の方の連絡先を記載しておくことで、スムーズな報告・連絡・相談が行えます。

緊急時に慌てないよう、緊急連絡先カードを作っておくこともおすすめです。



緊急時にやってはいけないNG対応

実際に緊急時に直面すると、焦ったり慌てたりしてしまい、間違った対応方法をしてしまう可能性もあります。

緊急時に介護士が行ってはならないNG対応は以下の通りです。

医師や看護師、救急隊員に相談せず、自己判断で対応を行う

焦ってパニック状態になり、利用者様への対応や声かけ、観察がおざなりになる

医療機関やご家族の方など、必要な報告・連絡・相談を怠る

緊急時は「とにかく素早く対応しなければ」と思うあまり、1人で判断や対応をしてしまったり、報告・連絡・相談を忘れてしまったりしがちです。

しかし、緊急時こそ、多職種連携や関係者への報告・連絡・相談が重要になります。

どんなに些細なことでも関係者との報告・連絡・相談を密に行い、サポートや助言を受けながら対応することをおすすめします。

 

緊急時に備えて日頃からやっておくべきこと3選

緊急時に焦って誤った対応をしてしまうと、取り返しのつかないことになってしまう可能性もあります。

できる限り迅速に、適切な対応を行うためには、介護士一人ひとりが日頃から知識を身につけておく必要があります

緊急時に備えて日頃からやっておくべきことの一例は、以下の通りです。

勉強会や研修会に参加し、緊急時対応や救命処置、心肺蘇生法について学ぶ

緊急時対応マニュアルや、緊急時の対応手順を熟読しておく

ほかのスタッフと協力し、緊急時のシミュレーションや訓練を重ねておく

ほかにも、上司や同僚、看護師やケアマネなどの多職種とのコミュニケーションを大切にすることで、緊急時に協力を得やすくなります。

 

まとめ

介護施設での緊急事態は、いつどのような場面で起こるのか予測不可能です。

また、起こる前兆や兆候が確認できる場合もあります。

緊急時に備えてマニュアルを熟読するだけでなく、利用者様の観察を徹底することで、緊急事態を防ぐこともできます。

緊急時に備えて、日頃からリスクマネジメントをしておくようにしましょう。

 

筆者プロフィール
りんか
保有資格:介護職員初任者研修/介護福祉士
経歴:福祉系高等学校にて介護福祉士の資格を取得後、特別養護老人ホームと訪問介護事業所に各2年勤務。高齢者グループホーム・デイサービス・障がい者支援センターでの実習・ボランティアの経験と介護事務の経験もあり。現在は介護福祉士Webライターとして活動中。
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