利用者様と介護職員の距離が近すぎると問題?適切な距離感とは?

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利用者様と介護職員は介護施設という限られた空間の中で密に関わるため、距離感が分からなくなったり、変に距離が近づきすぎたりしてしまうことがあります。距離感が縮まることで、かえって不適切ケアが生じやすくなってしまうことも。本記事では、利用者様と介護職員の適切な距離感について解説していきます。

利用者様と介護職員の距離が近いことで起こる問題とは?

利用者様と介護職員の距離が近いことで、アットホームな雰囲気の中、介護業務を勧められるというイメージがありますが、それは違います。

利用者様と介護職員の距離が近すぎると、さまざまな問題が生じやすくなるのです。

ここでは、利用者様と介護職員の距離が近いことで起こる問題を3つご紹介します。

1人の利用者様にこだわり全体が見えなくなる

利用者様と介護職員の距離感が近づくことで起こる問題として、1人の利用者様に構いすぎて他の利用者様の転倒や暴力行為などの危険行為に気づかないことです。

一人ひとりの利用者様に丁寧な個別ケアを提供したい。

そういった思いで1人の利用者様に丁寧に向き合うことは悪いことではありませんが、周りにが見えていないと、他の利用者様が呼んでいたり、車椅子から落ちそうになったりしていることに気づきにくくなってしまうのです。

共依存状態になってしまう

共依存状態とは、利用者様と介護職員、親子関係、恋人関係などでお互いに精神的に頼り合い、依存し合っている状態を指します。

特に、介護現場は力関係の強弱があるため、共依存状態に陥りやすい状況です。

利用者様は「自分ができないことを介護職員に助けてもらいたい」と考え、介護職員は「この人は自分がいないと何もできないから、助けてあげなきゃ」と考えます。

距離感が近すぎることで共依存状態になり、お互いに疲れやイラつきを感じてしまいます。

不適切ケアや虐待が生じやすくなる

利用者様と介護職員の距離感が近づきすぎてしまい、共依存状態になると、介護職員が疲れてしまい、「もう、いい加減にして!」とイラつきを感じるようになります。

疲れや利用者様に対するイラつきから、不適切ケアや虐待行為に発展しかねないのです。

利用者様との距離感が近いことで感じる介護職員の悩み

利用者様と介護職員の距離感が近づきすぎてしまうことで、介護職員が疲れたりイラつきを感じたりして、業務を上手く進められなくなります。

ここでは、利用者様との距離感が近いことで感じる介護職員の悩みを3つご紹介します。

弱音や泣き言を聞いたときの対応に困る

「私なんていない方がいいんだ」と泣きそうな顔で話す日もあれば、「あの人ひどいんだ。いつも私に乱暴する」と特定の介護職員の悪口を言う。

認知症や精神疾患がある利用者様の場合、介護職員が利用者様の弱音や泣き言に振り回され、精神的に疲れてしまうことがよくあります。

利用者様との距離感が近すぎると、こういった弱音や泣き言を聞く機会が必然的に増えてしまうのです。

頼られ過ぎて負担に感じる

部屋にいると「フロアに連れて行ってほしい」、フロアに行くと「お茶ちょうだい」「トイレ連れて行って」「部屋に連れて行って」と介護職員を呼び止める。

呼び止められた介護職員は1日中利用者様の移動介助やトイレ介助、お茶くみに追われて他の利用者様への対応が疎かになってしまいます。

介護現場では、利用者様との信頼関係が築けたと思っていた矢先、頼られ過ぎて負担に感じるということもよくあるのです。

暴力行為の対応に疲れる

認知症による暴力行為や重度の精神障害がある場合、介護職員の気を引くためにわざと他の利用者様に暴力を振るう利用者様もいます。

介護施設は基本的に要支援または要介護の認定を受けた高齢者を受け入れますが、その中にはこういった認知症の症状や精神障害がある方もいるのです。

そのような利用者様と距離感が近づきすぎてしまうと、暴力行為への対応に追われるため、1日中気が休まりません。

利用者様と介護職員との適切な距離感とは?

そもそも、介護施設は、さまざまな事情で在宅介護の継続が難しい要介護高齢者が入所する場所です。

介護施設に入所する利用者様の中には、ご家族との距離感が近づきすぎてしまい、ご家族が心身共に疲れや負担を感じてしまったというケースがあります。

利用者様の身内ではない、赤の他人である介護職員が利用者様の介護を行うのは、身内と離れることで、利用者様の依存心を断ち切るという意味もあります。
しかしながら、介護職員が利用者様との距離感を見誤り、共依存状態や不適切ケアに発展するというケースもよくあること。

介護職員の基本的な役割は、人生の先輩である利用者様に敬意をはらいながら、住み慣れた地域で自立した生活を送ることをサポートすることです。

ケアマネジャーが作成したケアプランに沿って介護サービスを提供しますが、ケアプランに記載のないケアや支援を行う必要はありません。

今一度、介護サービスの提供者と利用者様として、人としての尊厳を保った距離感が保てているか、しっかり確認することが大切です。

利用者様と介護職員の距離感に悩んだときの対処方法

毎日、介護施設という限られた空間で、物理的にも心理的にも利用者様と密になりがちな介護業務を行う介護の仕事。

利用者様との距離感が近づきすぎたと悩む介護職員も少なくありません。

ここでは、介護職員が利用者様との距離感に悩んだときの対処方法を3つご紹介します。

利用者様の病気・障がいを理解する

利用者様との距離感が近づきすぎてしまうのは、利用者様に何か心因的な要因がある可能性が考えられます。

例えば、認知症を患っている利用者様の場合、最近あった出来事をすぐに忘れてしまったり、これまでできていたことが急にできなくなったりすることで強い不安を感じるでしょう。

また、境界性パーソナリティー障害という精神疾患がある利用者様の場合、強い孤独感や人に見捨てられるのではないかという不安から、依存心が強くなります。

利用者様一人ひとりが持つ病気や障がい、その症状を理解することで、利用者様との距離感が近づきすぎてしまう原因が明らかになります。

利用者様の「できること」と「できないこと」を把握する

利用者様の「できること」と「できないこと」は人それぞれ異なります。

例えば、手すりを持って車椅子から立つことはできるけど、トイレでのズボンの上げ下げは介助が必要。
歩行や立位、トイレでの排泄が困難で、おむつ交換が必要など…

利用者様個々の「できること」と「できないこと」をそれぞれ理解し、できることを頼まれてもしっかりと断ることが大切です。

利用者様への対応を統一する

利用者様との適切な距離感について、介護職全体で話し合うことが大切です。

介護職員ごとに利用者様との距離感が異なると、利用者様が特定の介護職員に依存してしまう可能性があります。

そのため、利用者様がご自身でできることを頼んできたときの対応や、利用者様との日頃の関わり方など、介護職員全体で統一することが大切です。

介護の仕事で大切な「パーソナルスペース」とは?

利用者様と介護職員の適切な距離感を保つ上で、意識するべきなのが「パーソナルスペース」です。

パーソナルスペースとは、人間が相手に入られると不快感を感じる空間のことをいいます。

パーソナルスペースには、以下の4つの段階があります。

密接距離 【心理的距離感】
個人での会話をしたり、「手を握る」「ハグをする」といったスキンシップをしたりすることができる距離感です。
親子関係や恋人関係など、親しい関係性に多い距離感です。

【物理的距離感】
密接距離での自分と相手との距離感は、0cmから45cmまでです。
個人的距離 【心理的距離感】
個人での会話をしたり、相手の表情を読み取ったりすることができる距離感です。
親しい友人や同僚などの関係性に多い距離感です。

【物理的距離感】
個人的距離での自分と相手との距離感は、45cmから1.2mまでです。
社会的距離 【心理的距離感】
少し離れた位置から会話をすることができる距離感です。
仕事での会議や打ち合わせ、取引先の人とのやり取りなど、一般的なビジネスシーンで多い距離感です。

【物理的距離感】
社会的距離での自分と相手との距離感は、1.2mから3.5mまでです。
公衆距離 【心理的距離感】
複数の人にスピーチを行うことができる距離感です。
講演会や演説、学校で授業をする際の先生と生徒との距離感など、公衆の面前において多い距離感です。
自分以外の相手が複数人のため、個人的な会話はできません。

【物理的距離感】
公衆距離での自分と相手との距離感は、3.5m以上です。

場面や状況に応じて、上記4つの距離感のうち、どれを選択するべきか考えて行動する癖を身につけることが大切です。

利用者様と介護職の場合、「密接距離」または「個人的距離」で関わる場面が多く見られます。

まとめ

介護の仕事では、介護施設という限られた空間で、なおかつ物理的にも心理的にも利用者様と密になる介護業務を避けては通れません。

気づかないうちに利用者様との距離感が近づきすぎてしまうということもあるでしょう。

心身共に負担を感じる前に、利用者様との適切な距離感について見つめ直しましょう。

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