介護施設の監査とは?監査の対象施設や実施のタイミングについて

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介護施設で行われる「監査」とは、行政が人員配置・設備・運営などの基準違反や介護報酬の不正請求の疑いがある介護施設を対象に事前予告なく行うものです。本記事では、監査の目的や流れ、監査の対象施設について解説します。基礎知識を理解しておくことで、突然の監査にも慌てずに対処できるでしょう。

介護施設で実施される「監査」とは?

介護施設で実施される「監査」とは、行政が人員配置・設備・運営などの基準違反や介護報酬の不正請求の疑いがあると認められる場合に実施されるものです。

具体的には、行政が以下のような不正があると認めた場合に実施されます。

実地指導で人員配置、設備、運営などの基準違反が認められたが、介護施設に改善の意思が見られない場合

 市区町村長もしくは都道府県知事が介護報酬の請求に問題があると認めた場合

 利用者もしくは従事している職員が介護施設の運営に問題があると報告した場合

監査では、これらの基準違反や運営上の問題が事実である場合、事前予告なしに行政職員が介護施設に出向き、確認します。

介護施設は行政職員の質問に回答し、行政職員が求める書類の提示を行うことが必要です。

基準違反や運営上の問題が事実と認められた場合、違反の内容に応じて介護報酬の返還や指定の取り消しなどの処罰が下されます。

監査が行われる理由・タイミングは?

監査は事前予告なく抜き打ちで実施されるため、介護施設側が監査が行われるタイミングや時期を把握することはできません

しかしながら、監査が実施されるにはある一定の理由があるため、理由を理解しておくことで監査の対象から外れることも可能です。

以下では、監査が行われる理由について解説します。

実地指導で違反や問題が発覚した

監査が行われる前に、各介護施設で「実地指導」というものが必ず実施されます。

実地指導とは、行政職員が適正な介護サービスの提供・介護施設の運営が行えているか、各介護施設へ直接出向いて確認するものです。

実地指導で人員配置・設備・運営などの基準違反や、介護報酬の不正請求が確認されたにも関わらず、介護施設に改善の意思がない場合、監査へと切り替わります

>>>あわせて読みたい「介護事業所で行われる実地指導とは?当日の流れ・事前対策を解説」

介護施設に従事する介護職員から内部告発があった

「通常の夜勤では利用者40名に対し夜勤職員2名だったが、夜勤者が体調不良で欠勤した時は夜勤者1名で利用者40名の介助や見守りを行っていた」

「介護職員の利用者に対する暴言や不適切な言葉遣いが目立っていた」

こういった内部告発による通報が行政に入るケースが増えています。

通報者は介護施設に従事する介護職員や、介護施設を退職した元従業員です。

通報者の通報内容が事細かで、音声や映像などの証拠がある場合には監査の対象となり、立ち入り調査が行われます。

利用者の家族や近隣住民からの苦情報告

「面会の度に母親(利用者本人)の顔に大きなあざができており、職員からは『ベッド柵に自分でぶつけた』という説明しかない」

「施設のそばを通ると、職員の怒鳴り声や利用者の叫び声が聞こえる」

こういった苦情通報が行政に届き、監査につながるケースも増加傾向にあります。

通報者は利用者や利用者の家族だけでなく、近隣住民である場合も珍しくありません。

通報者の通報内容が事細かで、音声や映像などの証拠がある場合や、通報前にも実地指導で違反や問題が認められていた場合には、監査の対象となります。

監査で指摘される内容

監査で指摘される内容は、実地指導で指摘される内容とかなり似ています。

しかし、監査では確実な基準違反の指摘を行うため、指定取り消しや効力停止などの処罰につながる可能性が非常に高いです。

監査で指摘される「基準違反」の具体的な内容は、以下の通りです。 

不正請求 介護報酬を実際に請求する額より多めに請求する
虚偽報告 監査の際に求められた報告や書類の提示に従わず、虚偽の内容を報告したり、虚偽の書類を提示する
虚偽申請 実際は満たしてない人員配置・設備・運営の各基準を満たしていると偽って申請する
法令違反 不正請求や利用者への介護サービス提供を怠るなど、介護保険法が定める法令に違反する
運営基準違反 利用者の介護記録や、ご家族に説明が必要な書類の作成を怠り、介護施設の運営にあたって遵守しなければならない基準に違反する
虚偽答弁 監査の際に行政職員の質問に対して虚偽の回答をしたり、監査で訪問した行政職員の立入りを拒んだりする
人員基準違反 介護施設ごとに定められている人員数よりも少ない人員で運営する
人格尊重義務違反 利用者に対し、介護職員が人格を否定するような発言をしている

「監査」と「実地指導」の違いは?

監査と似たものに、実地指導というものがあります。

監査は実地指導や利用者・ご家族・近隣住民の苦情通報を基に、事前予告なしに行政が介護施設の調査を行います。

実地指導は介護施設が適正な運営を行っているか、定期確認として実施されるものです。

以下では、監査と実地指導の具体的な違いについて解説します。

監査

監査の目的と実施のタイミングは以下の通りです。

目的:基準違反の疑いがある介護施設に対し、違反の事実確認を行う

 実施のタイミング:原則として事前予告なく実施する

実地指導

実地指導の目的と実施のタイミングは以下の通りです。

 目的:適正な介護サービス提供が行われているか、定期確認を行う

 実施のタイミング:行政から事前予告があり、定期的に行う

監査で違反が見つかった場合の指導・処罰

監査で基準違反や問題が確認された場合、介護施設は違反の内容に応じた指導・処罰を受けることになります。

基準違反をしていたからといって、必ずしも厳しい処罰を受けるとは限りません。

違反の内容によっては弁明の機会を与えてもらえる場合もあります。

以下では、監査で違反や問題が見つかった場合の指導・処罰について解説します。

聴聞・弁明

監査の結果、違反の内容が「指定取り消し」に該当すると判断された場合、介護施設は国からの介護給付が受け取れなくなり、事業運営が困難になります。

「指定取り消し」の処罰を与えられた場合、以下の「聴聞・弁明」の手続きが行われます。

聴聞

聴聞手続とは、行政が指定取り消し処分を決定する際、介護施設側に意見を述べる機会を与えることです。

聴聞通知書に記載されている聴聞期日内であれば、介護施設側が不利益処分に対する意見を述べることができます。

弁明

監査の結果、「指定取り消し」に至らないと判断された場合、弁明の機会が与えられます。

弁明の機会では、弁明期間内に弁明書の提出が必要です。

この場合、介護施設は指定の効力停止を受け、一定期間、介護保険サービスの提供ができなくなります。

指導・処分

監査の結果、「指定取り消し」もしくは「指定の効力停止」の処分には至らないと判断された場合、以下の指導及び処分を受けることになります。

改善報告

監査で勧告には至らない軽微な違反が確認された場合、改善報告としてその場で改善のための指導が行われます。

改善報告の対象になるのは、施設運営や利用者への対応に不適切な点があった場合や、施設側が既に改善を検討している場合です。

行政が介護施設に対して口頭で指導した内容を、後日改善報告として書面で交付されます。

改善勧告

監査で大きな基準違反や運営上の問題が確認された場合、改善勧告として、期限を定めて改善を勧告されます。

介護施設が改善勧告の期限内に改善を行わなかった場合、各都道府県の公式サイトでその旨が公表されます。

改善命令

改善勧告を受けたにも関わらず、介護施設が改善を行わない場合、改善命令として期限を定めて改善を命令します。

改善命令が出された介護施設は、各都道府県の公式サイトにその旨が公表されます。

介護報酬の返還

介護施設が利用者や行政に対し、実際に請求するべき介護サービス料に過剰に上乗せした金額を請求していたことが監査で確認された場合、介護報酬の返還が求められます。

これまで介護施設が不正に請求していた介護報酬の全額、または一部が市区町村と利用者に返還されます。

まとめ

監査は基準違反が認められる介護施設を対象に、事前予告なく実施されます。

監査の対象となる介護施設は、以前から実地指導で基準違反が認められたり、利用者やご家族、近隣住民から苦情を受けたりしています。

監査の対象にならないよう、日頃から基準違反のない適正な運営を行うことが重要です。

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