介護事業所で行われる実地指導とは?当日の流れ・事前対策を解説

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介護事業所で行われる「実地指導」とは、行政の担当者が介護事業所を訪れ、適正な介護保険サービスの運営が行われているかを調査するものです。介護保険法の違反があれば、行政処分や受領した介護報酬の返還が求められます。本記事では、実地指導の流れや介護事業者の対応方法についてご紹介します。

介護事業所で行われる実地指導とは?

介護事業所で行われる「実地指導」とは、行政の担当者が介護事業所へ出向き、適切な事業運営が行われているか確認するものです。

実地指導は介護事業所の種別・形態ごとに定められている期間内に、最低でも1回以上の頻度で定期的に実施されます。

実地指導では、以下の点をチェックされます。

  • 職員数や利用者の人数が事業所ごとに定められている人員配置基準に沿っているか
  • 職員が事業運営上必要と定められている資格や免許を有しているか

また、上記の点を確認するために以下のような確認文書の提示が必要です。

職員の出勤簿・タイムカード・勤務体制一覧表・職員の資格証

実地指導の対象となる介護事業所

実地指導の対象事業所は、介護保険サービスを提供している介護事業所です。

具体的には、以下のような事業所が実地指導の対象となります。

居宅サービス 訪問介護・通所介護・短期入所生活介護(ショートステイ)など
地域密着型サービス 定期巡回随時対応型訪問介護看護・地域密着型通所介護・地域密着型特定施設入居者生活介護など
居宅介護支援 介護支援専門員(ケアマネージャー)による介護相談・ケアプラン作成
施設サービス 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院など
介護予防サービス 介護予防訪問入浴介護・介護予防訪問リハビリテーション・介護予防福祉用具貸与・介護予防特定施設入居者生活介護など
地域密着型介護予防サービス 介護予防認知症対応型通所介護・介護予防小規模多機能型居宅介護・介護予防認知症対応型共同生活介護など

実地指導の役割・目的

介護事業所で実地指導が行われる目的には、以下のようなものが挙げられます。

利用者の尊厳を保持した質の高い介護サービスの提供を継続させること

 利用者への虐待行為や身体拘束を防止すること

 介護保険制度の質を保ち、制度の持続可能性を高めること

良質な介護サービスが提供される介護保険制度を継続させることは、介護事業者や地域社会にとって重要かつ大きな課題です。

定期的な実地指導の実施により、質の高い介護保険サービスの運営の継続を目指します。

実地指導ではどんなことが指摘される?

行政が実地指導で介護事業所に指摘する内容には「どの介護事業所でも指摘を行う内容」と「事業所の種別・形態ごとに異なる」内容があります。

以下では、どの事業所でも指摘される共通項目と施設サービス・居宅サービスでそれぞれ指摘される内容をご紹介します。

共通項目

介護事業所の種別・形態にかかわらず、指摘される内容

・介護報酬の算定に不備や誤りがないよう記載すること
・人員基準を遵守した職員配置を行うこと
・秘密保持のために必要な措置を講じること
・職員の適切な勤務体制を確保すること
・サービス計画を適切に作成すること
・変更事項について速やかに届出を行うこと
・掲示物が適切に掲示されていること

施設サービス 介護施設は利用者の生活の場であることから、介護事業所及び介護職員が利用者と接する時間・期間が長いそのため、身体拘束や財産管理、介護事故への対策が主な指摘内容

・利用者の資金の運用は適正に行うこと
・建物設備の管理を適正に行うこと
・虐待行為及び身体拘束の適正化を図ること
・介護事故の発生及び再発を防止するため、必要な措置を講ずること
・災害対策を十分に行うこと
・事故報告を適正に行うこと
・利用者の食事、入浴、排泄などに関し、適切な介護を行うこと
居宅サービス 居宅サービスは、自宅で生活する利用者が必要な介護サービスを希望するため、ケアプラン作成やサービス内容変更などの手続きが多いそのため、書類と実際の介護サービス提供の整合性確認が主な指摘内容

・居宅サービス計画書の内容に沿ったサービスを提供すること
・提供したサービスの具体的な内容等を適切に記録すること
・アセスメントを適切に実施した上で計画書の作成や変更を行うこと
・1ヶ月に1回以上モニタリングを実施し、その結果を記録すること
・各担当者から専門的知識による意見を求め、その要点を記録すること

実地指導の内容・当日の流れ

実地指導当日に行われる調査内容・指導内容は、運営指導と報酬請求指導の2つです。

それぞれの具体的な内容をご紹介します。

運営指導 運営指導では、行政が事業者に対してヒアリングを行い、「運営指導マニュアル」を用いて運営の指導を実施します。

<調査・指導の内容>
・虐待防止や身体拘束禁止が徹底されているか
・利用者のニーズに応じたケアプランの作成や変更が行われているか
・ケアプランに基づく介護サービスの提供が行われているか
報酬請求指導 報酬請求指導にあたり、事前に自己点検シートが送付されます。
事業者が記載した自己点検シートも併せてヒアリングを行い、「報酬請求指導マニュアル」を用いて報酬請求の指導を実施します。

<調査・指導の内容>
・報酬基準に基づいた介護報酬の請求が行われているか
・介護報酬に見合う介護サービスの提供が行えているか
・多職種連携による高品質の介護サービスが提供できているか

実地指導までの事前準備

行政から実地指導のお知らせが届いた介護事業所は、実地指導当日までに以下の2点を準備しておきましょう。

書類

実地指導では、介護事業所が事前に準備した以下の書類を基に調査を行います。

介護記録・事故報告書・ヒヤリハット報告書・苦情報告書・職員の出勤簿・タイムカード

事前に準備する書類は行政から届く「お知らせ」に詳しく記載されています。

実地指導を行う場所

実地指導では行政の担当者が書類を確認し、事業所運営に関する質問を行います。

行政の担当者や介護職員がそれぞれの仕事を集中して行えるよう、面会室や会議室など、利用者や職員の行き来がない場所を用意しましょう。

実地指導当日の流れ

実地指導当日、午前と午後に分けて行政担当者による書類確認や敷地内確認が行われます。

具体的には、以下のような流れで実地指導が実施されます。

10:00 挨拶・職員紹介・スケジュール説明
10:15 実地指導・敷地内確認・書類確認
12:00 休憩
13:00 実地指導・書類確認
16:30 講評
17:00 実地指導終了

上記で紹介した実地指導の流れはあくまで一例です。

実際の調査状況や書類の揃い具合などにより、段取りや時間帯は異なる場合があります。

実地指導で違反が見つかった場合はどうなる?

実地指導で問題や違反が見つかった場合、その内容に応じて対応や処罰が決まります。

実地指導で介護事業所に問題や違反が見つかった場合の対応・処罰は以下の通りです。

口頭での指摘

  • すぐに改善が可能な課題または、事業所が既に改善を始めている課題がある
  • 実地指導の準備段階で書類の不備が判明した(実地指導当日に申告が必要)

上記のような場合、事業者に改善の意思があれば口頭での指導にとどまります。

なお、行政が口頭で指導した内容を、書面にして交付する場合もあります。

改善勧告

  • 指定の人員配置基準を大きく下回る職員数で事業の運営を行っていた
  • 指定基準に従った事業運営ができていない

上記のような場合、改善期限を定めた改善勧告書が交付されます。

介護事業所が期限内に改善を行わなかった場合、各自治体の公式ホームページに「事業所名」「所在地」「改善命令の内容」が公表されます。

厳重処罰

  • 指定事業所の指定禁止事項に該当する運営を行った
  • 事業所の設立や運営にあたり、定めた条例に違反した
  • 運営基準を下回る粗悪なサービス提供が行われていた

上記に該当した場合、介護事業所が都道府県知事から受けている指定の効力停止または取消しを受けることになります。

また介護報酬の不正請求が発覚した場合、指定の効力停止・取消しにはならず、不正請求を行った介護報酬の返還のみ求められます。

実地指導と監査の違い

実地指導に類似したものとして、監査というものがあります。

実地指導:介護事業所が基準を遵守した運営を行っているか確認するために実施される

監査:運営基準の違反や不正請求が認められるまたは、その疑いがある場合に実施される

監査は実地指導と違い、「運営基準に違反している」「基準違反の疑いがある」という介護事業所に対して実施されます。

監査の対象と判断されるのは、以下の情報が行政に届いた場合です。

  • 利用者もしくは家族からの各自治体に寄せられた苦情
  • 介護給付費適正化システムの分析が「特異傾向」を示す事業者
  • 介護サービス情報の公表制度を拒否する事業者

監査は実地指導とは違い、事前予告がありません

監査は運営基準違反や不正請求の疑いに基づいて行われるため、調査内容も実地指導よりかなり厳しいです。

まとめ

実地指導はよりよい介護保険サービスの運営を維持する目的で行われます。

違法や不正が認められた場合に行われる監査と違い、定期的な実施で介護事業所の運営状況を確認します。

実地指導は介護事業所と行政が戦うのではなく、お互いの協力関係のもと、適正な介護保険サービスの運営を目指すことが目的です。

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