自立支援介護とは?介護士が知っておきたい基本となる4つのケア

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近年、介護業界では「自立支援介護」という考え方が注目されています。これまでの「できないことを支援する」という考え方から、「自分らしい生活が送れるように、自立を促す支援」というような考え方へ変わりつつあります。本記事では、気になる自立支援介護の内容についてまとめました。自立支援介護について学び、介護士として働いている方はぜひ参考にしてみてくださいね。

自立支援介護とは

介護保険における自立支援とは、単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする考え方です。

2018年度の介護報酬改定より「自立支援介護」に重点を置き、身体的・精神的・社会的自立へ向けた支援を推進しています。

自立支援介護の大きな目的は社会保障費の削減ですが、介護を必要とする方が自立を目指すことによって自分らしい生活が送れるようになるなど、ほかにもメリットが存在します。

参照:厚生労働省|介護保険制度について

自立支援介護の基本となる4つのケア

自立支援介護には基本となる4つのケアがあります。

水分ケア

栄養ケア

運動ケア

排便ケア

介護士が行えるそれぞれのケアの内容について具体的に見ていきましょう。

水分ケア

人が生きていくうえで欠かせないのが水分ですが、水分の多くは筋肉に含まれています。

人と比較して高齢者は筋肉量が少ないため、体内の水分量が少ない傾向です。

自立支援介護の基本の1つとなる「水分ケア」では、1日に必要な水分摂取量は1,500mlとされています。

水分摂取量が足りない場合、脱水症状や熱中症、ほかにも心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなり得ます。

高齢者になると感覚が鈍くなることから、のどの渇きなどを感じづらくなるため、周囲にいる人がこまめに水分を進めることが大切です。

水やお茶ばかりを飲むのが苦痛な方に対しては、その方の好きな飲み物やゼリーなどを摂取してもらうといった方法もあります。

>>>あわせて読みたい「【介護士必見】介護をする上で大切な高齢者の水分補給の工夫6つ」

参照:厚生労働省|『健康のため水を飲もう』推進運動

栄養ケア

体づくりの基本となる栄養が不足してしまうと、認知症や寝たきりの原因となる可能性があります。

栄養不足によって体力が落ちてしまうと、身体を動かす機会も少なくなります。
結果として筋力や意欲の低下にもつながってしまうでしょう。

「栄養ケア」において、1日に必要な摂取カロリーは普通食で1,500kcal以上とされています。

また、食事をする際には「嚙む力」「飲み込む力」が必要になりますが、これらの筋肉も使わなければ衰えてしまいます。

口腔機能が衰えてしまうと嚥下機能の低下や誤嚥性肺炎になるリスクが高まり、健康に悪影響を及ぼすでしょう。

口腔機能を維持・向上するためには、噛む練習や嚥下体操などが効果的です。

>>>あわせて読みたい「介護士が知っておきたい「低栄養」とは?リスクや防ぐための工夫」

運動ケア

高齢者になり体力が衰えると運動する機会や意欲も減少してしまいます。

しかし、運動することによって体力・筋力の維持・向上や食欲の増進も期待できるため、自立した生活を目指すためには、運動は不可欠です。

「運動ケア」においては、1日2kmの歩行が目標とされています。

身体機能には個人差があるため、無理のない程度に少しずつ体を動かす習慣をつけ、運動量を増やしてみましょう。

排便ケア

高齢者になると食事量や運動量が減ることから、便秘に悩む方も少なくありません。

食事内容や食事量によって個人差はありますが「排便ケア」では、3日以内の自然排便を目標とします。

自然排便を促すには、落ち着く環境で、腹圧がかかりやすい体勢がとれるようにすることを習慣化することが大切です。

自立支介護の基本となるほかのケアの「水分ケア」「栄養ケア」「運動ケア」が実践できていると、おのずと便秘の解消にもつながるため意識してみましょう。

なお、疾患によって便秘が引き起こされる場合もあります。
パーキンソン病などによる症候性便秘や、腸閉塞などの器質的疾患にともなう便秘などがあり、これらは原因疾患に対する治療が必要となります。

自立支援介護のメリットは?

自立支援介護には3つのメリットがあります。

QOL(生活の質)の向上

介護負担の軽減

介護度が改善する

3つのメリットをそれぞれ解説します。

QOL(生活の質)の向上

自立支援介護によって、介護を必要とする方が自分でできることが増えたり、行ける場所の選択肢が増えると意欲が増します。

結果的にQOLの質の向上につながり、自らで決定できる選択肢が増えるため、自分らしい生活が送れるようになるでしょう。

介護負担の軽減

ご利用者様が自分でできることが増えると、家族や介護士の身体的・精神的な介護負担も軽減されます。

日常生活でできることが増えると、ご利用者様にとっても自尊心を取り戻すことができるため、介護をする側と受ける側の双方にとってメリットがあるといえるでしょう。

介護度が改善する

日常生活において、自立を目指すことによって介護度が改善する場合があります。

医療費や介護費用の負担軽減も期待できるでしょう。

自立支援に対する国の取り組み

自立支援に対する国の代表的な取り組みをご紹介します。

ADL維持加算

自立支援に対する国の取り組みの1つとしてADL維持加算という加算があります。

ADL維持加算とは、2018年度の介護報酬改定で新設された加算です。

利用者のADL(日常生活動作)が維持または向上しているという結果が見られた事業所に対して、報酬が加算される取り組みです。

このような取り組みからも国は自立支援に対して重きを置いていると考えられ、今後も状況に応じて対応策を打ち出すと予想されます。

自立支援介護のニーズは増え、国や介護業界の流れに合わせて現場でも適切な対応が求められるでしょう。

参照:厚生労働省|通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の報酬・基準について

自立支援介護を行う際の注意点とは?

自立支援介護の代表的な注意点を3点解説します。

基本となる4つのケアはバランスよく行う

4つのケアのうち最も重要視されやすいのは運動ケアですが、ご利用者様の運動機能には差があります。

無理して体を痛めてしまったり、怪我などをしてしまったりしては運動機能を低下させる危険性もあります。

基本となる4つのケアはバランスよく、あくまで無理のない範囲で行いましょう

なお、基本となる4つのケアで示されている数値は、あくまで一般的な数値であることを理解しておきましょう。

例えば、疾患によって水分制限がある方に関しては、必ず医師の指示通りの水分摂取量を守らなければいけません。

それぞれのご利用者様の疾患や体格、生活習慣を考慮したうえで安全に行いましょう。

本人の思いを尊重する

自立支援介護はご利用者様がその人らしく生活できるようになることを目標に支援します。

しかし、介護士側の考えとご利用者様の思いに違いがあると、意識に差が出てしまい適切な自立支援が行えません

あくまでもご利用者様の思いに寄り添って支援することが大切です。

施設側でご利用様を選ばない

要介護度の改善の見込みが低いご利用者様は、介護報酬の評価対象にならないため、改善の見込みが高いご利用者様を選ぶケースがあります。

要介護度の改善だけに重きを置いて、ご利用者様を選ぶことがないように注意が必要です。

まとめ

本記事では、自立支援介護の内容や自立支援介護を行う際の注意点を中心にお伝えしました。

自立支援介護はご利用者様を自立に向けて支援し自分らしい生活が送れることを目標としますが、その中でもご本人の意思を尊重することが大切です。

自立支援介護を理解し、それぞれのご利用者様に対して適切な支援ができるように意識しましょう。

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