お役立ち情報
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寒い季節に介護施設で注意したいことには、健康上のトラブルや感染症が挙げられます。高齢の利用者様は、身体機能の低下によって感染症のリスクが高まる傾向にあります。本記事では、介護士が認識すべき、寒さが高齢者に引き起こすリスクとその対策を解説します。
■目次
高齢者が寒がる原因は、主に以下の4つがあります。
高齢になるにつれて全身の臓器の機能が低下する傾向があります。
臓器が衰えることにより、体温調節が難しくなります。
高齢になると活動量が少なくなる傾向があり、それにともなって全身の筋肉量も減少します。
筋肉には熱を発生させる働きがあるため、筋肉量が減少すると寒さを感じやすくなるでしょう。
高齢になると、歯が少なくなる・唾液量が減少するなどの嚥下機能の低下や活動の低下によって、食事を食べる量が減少する傾向があります。
摂取できるカロリーが減ると、熱を発生させる材料が減ってしまい、寒さを感じやすくなってしまうでしょう。
認知症になると脳の自律神経に影響が出ます。
自律神経の働きが悪くなった結果、体温の調節がうまくできなくなり、寒がってしまうケースもあるでしょう。
特にレビー小体型認知症の場合は自律神経に影響が出るケースが多いといわれているため、注意が必要です。
また、認知症の方は見当識障害によって季節の認識が難しくなります。
自分が着ている衣類がその日の気温に適しているかどうかの判断が難しい場合もあるでしょう。
冬場の寒さによって、身体には以下のようなリスクが起こり得ます。
寒さによって身体がこわばると全身の血液の流れが悪くなるため、酸素や栄養素が運ばれづらくなり、身体に老廃物が溜まりやすくなります。
筋肉が固くなった状態で身体を動かすと関節に負荷が掛かり、痛みが出てしまうでしょう。
冬場は寒さにより暖房を使用する頻度も高くなります。
したがって室内の湿度も下がるため、皮膚・粘膜・呼気などから自覚がないまま水分が奪われてしまい、脱水症状に陥るリスクが高くなるでしょう。
また、身体が脱水状態だと血圧が変動しやすくなることから、心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こす危険性があります。
脱水症状には皮膚や口腔内の乾燥・尿量の減少・頭痛・吐き気・などのサインがあるため、注意が必要です。
>>>あわせて読みたい「高齢者が気を付けたい脱水症とは?症状や介護現場でやるべき対策」
高齢になると皮脂の分泌が低下し、肌のバリア機能も低下してしまいます。
皮膚の乾燥はひりつきやかゆみに繋がり、新たな皮膚トラブルを引き起こす可能性もあるでしょう。
>>>あわせて読みたい「介護士が気を付けたい高齢者の皮膚トラブル…スキンケア方法は?」
心筋梗塞とは、心臓の血液・酸素不足が原因で心臓が壊死してしまう病気です。
心筋梗塞などの心疾患で亡くなる人の数は、寒さが厳しくなる12月~2月に多い傾向にあります。
脳梗塞とは、脳の血液・酸素不足が原因で脳が壊死してしまう病気です。
心疾患と同様に脳梗塞などの脳血管疾患も12月~2月に多い傾向です。
温度の急激な変化により、心疾患や脳血管疾患が引き起こされることをヒートショックといいます。
例えば、暖かい部屋から寒い部屋へ移動すると、身体が熱を保持するために血管を収縮させます。
すると血圧が急激に上がり身体に負担が掛かります。
急激な血圧の変動により、ヒートショックは引き起こされるのです。
ヒートショックが引き起こされやすいのは入浴時ですが、以下のような対策があります。
ヒートショックの対策を実施し、安全に入浴しましょう。
●家全体の室温を普段過ごしている部屋と同じくらいの室温にする
●食後すぐやアルコールを摂取した状態での入浴は避ける
●湯船・シャワーの湯温は41度以下に設定する
●湯船に浸かる時間は10分以内にとどめる
●湯船から出る際は呼吸を整え、ゆっくり立ち上がる
>>>あわせて読みたい「介護士が介護施設で秋に注意すべきこと|秋バテやヒートショック」
冬に介護施設で流行りやすい感染症について解説します。
どのような感染症が流行りやすいかを把握し、施設内での流行を未然に防ぐ取り組みを行いましょう。
冬に流行する感染症として最もよく耳にするインフルエンザ。
インフルエンザウイルスの飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着した場所に触れることで感染します。
感染力が強く、施設内で一人が感染するとたちまち周囲に伝染しやすいという点も特徴です。
冬の感染性胃腸炎の主な原因であるノロウイルス。
ウイルスを持っている貝類を生あるいは十分に加熱しない状態で食べると感染するだけでなく、人から人への飛沫感染や接触感染も発生します。
非常に強力なウイルスで、高齢者が罹患すると重篤化し緊急搬送や入院に至ることもあります。
細菌性肺炎はインフルエンザの合併症として発症しやすく、高齢者は特にその確率が高くなります。
インフルエンザのように空気感染しやすいだけでなく、口内に蓄積された細菌や微生物が肺に侵入することで感染することもあります。
そのため、日頃から口腔ケアを行うことが重要です。
溶連菌感染症は、溶血連鎖球菌と呼ばれるウイルスによる感染が原因で発症します。
子どもに多くみられる感染症ですが、高齢者が感染する可能性も否定できません。
のどが腫れて痛くなる急性咽頭炎を引き起こしやすく、治療には抗生物質の内服が必要です。
RSウイルス感染症は2~3歳までのほぼ100%の子どもが罹患するといわれており、大人は抗体があることから感染例がほとんどありません。
しかし免疫力が低下した高齢者は感染リスクがあり、RSウイルス感染症により重症化した例は大半が高齢者であるというデータも。
またRSウイルスへの感染が介護施設の高齢者の入院と死亡を増加させていたとの報告もあるほど、軽視できない感染症です。
参照:高齢者のRSウイルス感染|国立感染症研究所
ここ数年全世界で猛威をふるう新型コロナウイルス。
日々報道されていることから周知の人も多いように、高齢者が感染すると重症化するリスクの高い感染症です。
介護施設によるクラスター発生例も多く、施設全体で感染症対策に取り組む必要があります。
>>>あわせて読みたい「【2024年最新版】介護施設におけるコロナ対策や感染時の対応」
ご利用者様の中には冬にカイロや電気毛布、湯たんぽなどのアイテムを寒さ対策で使用されている方もいます。
寒さを和らげてくれる便利なアイテムですが、使い方を間違えると低温やけどにつながってしまうことも。
低温やけどは、身体の同じ部位を長時間温め続けることで発生します。
皮膚が損傷を受けるまでの温度と時間は、44℃で3~4時間、46℃で30分~1時間、50℃で2~3分が目安。
高齢者や糖尿病の方は感覚が鈍くなっており、低温やけどが重症化しやすい傾向があります。
低温やけどは皮膚が受けているダメージにより、症状は以下のように異なります。
低温やけどを防ぐにはそれぞれのアイテムの使用方法を工夫しましょう。
電気毛布や湯たんぽなどを使用する場合、あらかじめ布団を温めておくのに使用し、就寝中は使用しないようにしましょう。
使い捨てカイロは身体に貼る場合、必ず衣服の上から貼って使用し、同じ部位に長時間当てないようにします。
また、カイロは上からサポーターなどで皮膚に押さえつけないように注意が必要です。
ここからは、正しい寒さ対策の方法を解説します。
冬場に有効な4つの寒さ対策をご紹介します。
腹部から足首、首から二の腕を冷やしてしまうと、身体全体に寒さを感じます。
そのため、マフラーやネックウォーマー、腹巻きやアームウォーマーなども活用すると、寒さを感じにくくなるかもしれません。
また、認知症の方はその日の気温に合わせて適切な衣類を着用できるよう、介護士が注意しましょう。
筋肉量が低下すると寒さを感じやすくなるため、適度な運動を心掛けましょう。
特に大腿部や臀部などの下半身の筋肉は大きいため、歩行する機会を増やすだけでも筋肉量の維持・向上が期待できます。
また、こまめに動くことで関節や筋肉が固まってしまうのを防ぎます。
寒いと動くこと自体が億劫になりがちですが、介護士が声掛けをし、無理のない程度に運動できるように促しましょう。
食事は栄養バランスを考えて食べることが大切ですが、特にたんぱく質が多く含まれている食材を意識して食べましょう。
筋肉は熱を発生させるため、たんぱく質を摂取することで寒さを感じにくくする手助けになるでしょう。
高齢者の身体は筋肉を作る機能が低下しているため、たんぱく質を十分に摂取しなければなりません。
たんぱく質が多く含まれている食材は、豚ロース・鶏胸肉・鮭・焼きちくわ・卵・牛乳・納豆・豆腐などです。
入浴すると身体の血液・リンパの流れが良くなります。
さらには筋肉の疲労・緊張を和らげたり、胃腸などの臓器の機能を高めたりする効果も期待できます。
ヒートショックが起こらないように対策しつつ、適切に入浴介護を実施しましょう。
寒さは高齢者の身体にさまざまなリスクを引き起こします。
また、寒さ対策で使用するアイテムも、使い方を間違えると低温やけどを負ってしまう可能性もあります。
寒さを和らげる対策やアイテムの使用時の注意点を理解し、寒い季節を健康的に乗り越えましょう。
また、さまざまな施設で経験を積みたい、とお考えの方は転職を視野に入れてみてもいいかもしれません。
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