作業療法士ってどんな資格?活躍する場所や他の専門職との違い

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作業療法士は、リハビリテーションの専門職です。近年は注目されることが増えた職種ですが、まだまだどんな仕事をする人なのか分からない人も多いのではないでしょうか。今回は、作業療法士について勤務先や他の専門職との違い、年収、なり方について解説します。

作業療法士とは

作業療法士はリハビリテーションの専門職で、厚生労働大臣が認定する国家資格です。

「字を書く」「顔を洗う」「ご飯を食べる」といった複数の動作が絡む応用的動作に関する能力や、外出・他者との交流・就労といった社会参加に関する能力を維持改善し、患者の生活の質(QOL)を高めていくのが目的です。

身体機能に関するリハビリテーションだけではなく、社会参加に必要な「こころ」にも働きかけるリハビリテーションを行うことが特徴です。

作業療法士の勤務先は?

作業療法士が活躍する場所は多岐に渡ります。

日本作業療法士協会の調査によると、実際に就業している作業療法士の中で最も多い勤務先は病院で、次点が介護施設となっています。

勤務先割合
病院・診療所 75.4%
高齢者施設 13.5%
養成校 3.0%
児童福祉施設 1.6%
障害者施設 0.8%
保健所等 0.4%
特別支援学校 0.2%

参照:日本作業療法士協会|2019年度 日本作業療法士協会 会員統計資料

作業療法士が活躍している勤務先ごとの特徴をご紹介します。

病院

作業療法士の勤務先で最も多いのは病院です。

入院施設のある総合病院では、病気を発症した直後や手術後の「急性期」、病状がある程度落ち着いた「回復期」、継続的な医療的ケアが必要な「慢性期」など状態に応じたリハビリを行います。

外来のみの開業医やクリニックでは、医師や看護師と協力しながら通院患者の身体的なリハビリを行い、社会参加能力の向上に向けた取り組みも行っています。

また、精神病院も勤務先のひとつです。
統合失調症やうつ病などで社会活動がうまくできなくなってしまった患者に対し、不安症状を和らげたりコミュニケーションを高めたりする働きかけを行います。

また病気になる前のように社会に戻ることができるようにするのもリハビリテーションの役目なのです。

介護施設

作業療法士の勤務先で2番目に多いのが、介護施設です。

介護施設では、主に「機能訓練指導員」という職種で利用者のリハビリテーションに関わります

特に多いのが介護老人保健施設・訪問看護・訪問リハビリテーション・デイサービス(通所介護)・デイケア(通所リハビリテーション)です。

入所系の施設では、入所している利用者に対してリハビリを実施。通所系の施設ではそれぞれの利用者の主治医からの指示のもと、QOL(生活の質)向上に向けたリハビリを実施しています。

訪問系では「訪問看護」と「訪問リハビリテーション」事業所がありますが、訪問リハビリテーションに比べて訪問看護の方がサービス利用に求められる条件が少ないことからニーズが多くなっています。

養成校

作業療法士の勤務先で3番目に多いのが、養成校です。

作業療法士の現場経験を積んだ後、4年制大学や専門学校などの養成校に所属して後身の育成に当たるケースも多いです。

現場で得た経験や知識を元に講義や実習を行いながら作業療法士を育成して業界全体を影から支えることができ、現場とは異なるやりがいを感じるでしょう。

児童福祉施設

児童福祉施設では、障がいのある子どもが生活に必要な能力を獲得できるよう、成長度に応じた訓練を行います。

身体機能と脳の発育の両面からアプローチします。

また子ども本人だけでなく、保護者の相談に応じてアドバイスを行ったり、環境を工夫したりと家族を支えるのも作業療法士の役割になっています。

障害者施設

障害者施設では、障がいを持つ方が自立した生活を送ることができるよう、身体機能のリハビリや住環境の整備など幅広いアプローチでの支援を行います。

例えば生活する上で困ったことを解決する方法を一緒に考えたり、適切な自助具の選定や使い方の指導を行ったりします。

作業療法士と他の専門職との違い

介護現場でも活躍する作業療法士ですが、介護施設には他にも〇〇士という同じような前の国家資格で働く人が多く存在します。

ここでは、介護施設に勤務していて作業療法士と似ている名称の資格との違いについてご紹介します。

介護福祉士との違い

作業療法士と介護福祉士との違いは、担っている役割です。

作業療法士は「機能訓練指導員」の名称で、リハビリの専門職として利用者の心身機能の維持向上を目的としたリハビリテーションを実施します。

これに対して、介護福祉士は「介護職員」の名称で利用者の身体介護や生活援助を行っています

理学療法士との違い

作業療法士と理学療法士の違いは、回復を目指している機能や回復に用いる手段です。

作業療法士が回復を目指している機能とは、「洗顔」「料理」「スマホでメールを送る」といった応用的な動作です。
また、これらの能力の改善を通じて社会適応能力の回復をも目的としています。

これに対して、理学療法士が回復を目指す機能は「立つ」「歩く」「座る」などの基本的な動作の機能回復を目的としています。
運動やマッサージ、電気療法や温熱療法などの物理的な方法で機能の回復を目指します。

つまり、端的に言えば作業療法士が担う分野は「IADL」(手段的日常生活動作)であり、理学療法士が担う分野は「ADL」(日常生活動作)という違いです。

言語聴覚士との違い

作業療法士と言語聴覚士の違いは、得意とする分野です。

作業療法士が得意としているのは日常の生活動作の中でも「洗顔」や「料理」などの、複数の動作が絡み合う応用的な動作に関する機能訓練です。

これに対して、言語聴覚士とは「話す」「聞く」「食べる」機能の維持回復によって、コミュニケーション能力や食事に関する能力を高める目的でリハビリを実施する専門職です。

例えば脳卒中後の失語症や、聴覚障害、声や発声に関する障害、児童分野におけることばの発達の遅れなどに専門的な知識や技術を以てアプローチします。
また、口の動きが不十分なことで上手く飲食ができなかったり、嚥下能力の低下によって誤嚥性肺炎のリスクがあったりする方の機能訓練も行います。

このように、作業療法士は複数の基本的な動作を組み合わせて実施する応用的な生活動作のリハビリを得意としているのに対し、言語聴覚士はコミュニケーションや摂食動作に関する機能のリハビリテーションを得意としている違いがあります。

作業療法士の年収は?

厚生労働省の調査によれば、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士などのリハビリ職の平均年収は、約405.5万円でした。

この数字は、看護師(479.0万円)よりは少ないものの、介護職の上位資格である介護支援専門員(385.8万円)よりも多い年収となっています。

細かく見ていくと、月額の平均総支給額は28.3万円、年間賞与の平均は66.2万円でした。

年代別の所得額を見ると、最も給料が高い年代が55〜59歳で、年収にすると約601万円まで上昇しています。

このことから、多くが定年退職を迎える60歳をピークに経験を積むにしたがって着実に年収アップが期待できることが分かります。

出典:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査

どうすれば作業療法士になれる?

作業療法士になるには、大学・3年制の短大・専門学校いずれかの作業療法士学科がある専門教育機関を卒業後に、国家試験に合格する必要があります。

介護福祉士の資格の場合は大学などを卒業する以外にも実務経験ルート(実務経験3年+実務者研修修了)がありますが、作業療法士の場合は学校卒業後に国家試験に合格するという1パターンしかありません。

なお、直近である2021年度試験の合格率は80.5%で、過去5年の合格率は71.3〜87.3%となっています。

まとめ

ここまで、作業療法士について以下の通りご紹介してきました。

作業療法士とは、応用的な動作能力の獲得と社会性の回復を目的としたリハビリの専門職である

作業療法士の勤務先は病院が最も多く、介護関連の施設が2番目に多い

作業療法士と介護福祉士・理学療法士・言語聴覚士は業務上の役割や担っている目的が異なる

作業療法士の年収の平均値は、405.5万円

作業療法士になるためには、大学などの専門教育機関卒業後に国家試験に合格する必要がある

これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

 

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