お役立ち情報
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介護現場で働く介護職の方なら一度は記入したことがある「ヒヤリハット報告書」。ヒヤリハット報告書と事故報告書は、具体的にどう違うのでしょうか。そもそも、ヒヤリハット報告書は何の目的があって記入するのでしょうか。知っているようで意外と知らない「ヒヤリハット報告書」の目的や事例、記入例について解説します。
■目次
介護職が記入する「ヒヤリハット報告書」とは、重大な介護事故には至らなかったものの、介護事故につながるような危険因子を記載する報告書です。
介護事故とは利用者の転倒・転落・誤薬・窒息など、生命に関わる事故のことを指します。
ヒヤリハット報告書に記入するのは、転倒・転落・誤薬などの介護事故を起こしてしまったが、利用者に実害はなかったといったケースです。
なおヒヤリハットとは、危うく重大な事故につながるような出来事に直面し、「ヒヤッとした」「ハッとした」という状況を指します。
介護以外の運送業や工場などでも、「運送途中に荷物が崩れてしまった」「機械の操作を誤り、器物を破損してしまった」というケースにヒヤリハット報告書を記入します。
ヒヤリハット報告書とは、人の生命に関わる事故や労災につながるような「ヒヤリ・ハッとした」という体験・出来事を記入する報告書です。
介護業務を行う上で「ヒヤリ・ハッとした」という体験・出来事を共有することで、利用者の生命に関わる介護事故を未然に防ぐことができます。
ここでは、ヒヤリハット報告書を記入する目的・重要性を3つご紹介します。
「もう少しで介護事故を起こしてしまうところだった」というヒヤリ・ハッとした体験を報告書に書くことで、客観的に事実を捉えることができます。
なぜ、ヒヤリ・ハッとする体験・出来事が起こってしまったのでしょうか。
また、同じミスを再発させないためにはどうすればいいのでしょうか。
ヒヤリハット報告書を記入することでその原因が明確になり、利用者の生命に関わる介護事故を未然に防止することができます。
ヒヤリハット報告書を記入することで、介護事故の原因になり得る出来事を職員同士で共有することができます。
「浴室のタイルで利用者が滑りそうになった」「廊下に置いていたゴミ箱に利用者の車椅子が引っかかった」など、具体的に注意すべき点が明確します。
ヒヤリハット報告書の共有は、「介護事故防止」に対する介護職一人ひとりの意識を高めるという重要な役割があるのです。
「脇腹に大きな内出血ができていて、職員に聞いたら『ベッド柵でぶつけた』といわれた。でも、脇腹をベッド柵でぶつけるなんて不自然だ」
利用者の家族からこういった苦情を受けることや、訴訟を起こされる可能性もあります。
日頃からヒヤリハット報告書を丁寧に作成しておくと、利用者の家族や行政から介護事故について問われた場合、証拠として提示することができます。
介護現場では、介護業務を行う上でどのようなヒヤリ・ハッとした出来事が起こるのでしょうか。
ここでは、介護現場でよく起こるヒヤリハットの事例を5つご紹介します。
利用者が食事をする際に起こりやすいヒヤリハットは以下の通りです。
● 利用者が他の利用者の食事を誤って食べてしまった
● 総義歯の利用者が入れ歯を入れ忘れて食事を食べ始めてしまった
● 食事介助中に利用者が激しくむせこみ、意識が一時的に消失してしまった
利用者が入浴をする際に起こりやすいヒヤリハットは以下の通りです。
● 歩行介助中、利用者が浴室内のタイルで滑って転倒してしまった
● 利用者が入浴中にのぼせてしまい、歩行動作が一時的に困難になってしまった
● 着替え介助中、利用者の身体に内出血ができているのを発見した
利用者が移動中に転倒したり、ベッドや車椅子から転落してしまったりなどの「転倒・転落」に関するヒヤリハットは以下の通りです。
● 1人で施設内を歩行していた利用者が転倒した
● 車椅子が廊下のゴミ箱にぶつかり、ゴミ箱をのけようとした利用者が転倒しそうになった
● 介護職が利用者の居室を訪室すると、利用者がベッドから転落していた
利用者の服薬介助を行う際に起こりやすいヒヤリハットは以下の通りです。
● 利用者から預かっていた内服薬を介護職が間違えて昼と夕、あべこべにセットしていた
● 介護職が手渡しした内服薬を利用者が飲み忘れた
● シーツ交換や掃除の際に、利用者の内服薬が落ちていた
利用者の「認知症」が原因で起こりやすいヒヤリハットは以下の通りです。
● 認知症の男性利用者が1人で髭剃りを使用して、顔に切り傷を負ってしまった
● 認知症の利用者が、他の利用者に暴力を振るってしまった
● 認知症の利用者が、他の利用者のお菓子を勝手にとって食べてしまった
ヒヤリハット報告書の書式や項目は、介護施設によって異なります。
いずれの書式・項目でも、「誰が」「いつ」「何を」「どこで」「どうして」「どのように」を明確にすることを心がけましょう。
介護施設で記入するヒヤリハット報告書の記入例は、以下の通りです。
発生日時 | 令和〇年〇月〇日〇曜日 〇時〇分 |
---|---|
発生場所 | 特養2階・山田様の居室 |
利用者 | 氏名:山田花子 性別:女性 年齢:83歳 要介護度:要介護3 |
報告者 | 氏名:田中太郎 職種:介護職 |
事故形態 | ☐転倒 ☑転落 ☐誤嚥 ☐誤薬 ☐その他 |
発生状況 | 13時30分頃、山田様の居室からコールがあり訪室すると、山田様がベッド横で尻もちをついた状態で床に座っていた。 |
受傷部位 | 腰・臀部(痛みや内出血等なし) |
応急処置 | すぐに本人に声をかけ、外傷や痛みの確認を行った。 本人は「トイレに行こうとしたら、よろけちゃって」と話し、痛みの確認を行うと「大丈夫」という。 職員2名で起こすと、問題なく立ち上がることができた。 |
その後の対応 | 看護師に報告し、外傷の確認を行う。 しばらく様子観察を行うことと、看護師から指示を受ける。 |
連絡 | 当日、ベッドから転落した旨を長女様に連絡する。 翌日、面会に来られた長女様に謝罪を行う。 |
原因 | 職員の昼休憩の時間帯だったため、見守りが不十分だった。 また、この時間帯は職員2名で40名の利用者の排泄介助を行うため、利用者の見守りが行き届かない。 職員の役割分担や人員配置が十分ではなかった。 |
対応策 | 職員は昼休憩の際、利用者の様子が見守れるフロアまたは居室周辺で休憩をとる。 また、休憩中の職員でもコール対応を行うようにする。 |
ヒヤリハット報告書は、利用者の生命に関わる介護事故を防ぐ目的で記入します。
そのため、ヒヤリ・ハッとした出来事の原因や今後の改善策を詳細に記入することはもちろんのこと、誰が見ても分かるように書くことが重要です。
ここでは、ヒヤリハット報告書を記入する際の注意点を3つご紹介します。
ヒヤリハット報告書では、報告者の主観や憶測は記入しないようにしましょう。
例えば、「利用者の右前腕に縦10cm・横5cmの内出血ができていた」という事実に対して、「ベッド柵でぶつけたのだと思う」という報告者の憶測は不要です。
ヒヤリハット報告書を記入する際は、根拠のない主観や憶測を避け、報告者が見たままの事実を記入することが大切です。
ヒヤリハット報告書を記入する際は、5W1Hを意識しましょう。
5W1Hとは、「When:いつ」「Where:どこで」「Who:誰が」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」の英単語の頭文字をとったものです。
ヒヤリハット報告書は、必要に応じて利用者のご家族や、行政職員に開示します。
そのため、専門用語を避け、誰でも分かるように記入することが大切です。
例えば、誤薬は「誤って違う薬を飲ませてしまった」、剥離は「皮膚の表面がめくれた」など、分かりやすい言葉に書き換えるようにしましょう。
ヒヤリハット報告書は、起きてしまった介護事故を報告する事故報告書ではありません。
利用者の生命を左右する介護事故を未然に防ぐために、介護業務を行う上でヒヤリ・ハッとした体験・出来事を報告するものです。
介護事故を起こさないためには、職員同士でヒヤリハットの共有を行うことが重要です。
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