介護士は医療行為ができる?認められている行為と条件について

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「利用者さんの家族から、インシュリン注射をしてほしいと頼まれたけど、私がやっていいのかな?」介護の現場で、ある行為が医療行為にあたるのかどうか迷う場面はありませんか?介護士が行うことが許されていない医療行為をしてしまうと、利用者の命に関わるだけでなく、罰則に問われる可能性もあります。そのような事態にならないためにも、介護士が行うことができる医療行為とその条件についてしっかりと確認していきましょう。

介護での医療行為とは

医療行為とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為であるとされています。

医師法では、医師でなければ医療行為をしてはならないと定められています。

したがって、介護士は医療行為をすることはできません

医療行為を介護士が行えるかどうかという視点で分類すると、次の3つがあります。

医療行為にあたらない行為

条件付きで介護士が行える医療行為

介護士が行えない医療行為

以下から、3つの視点それぞれについて確認していきましょう。

医療行為にあたらない行為

まずは医療行為にあたらない行為についてみていきましょう。

厚生労働省によると、以下に挙げたものは医療行為にあたらないとされています。

  • 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測する
  • 自動血圧計による血圧を測定する
  • パルスオキシメータで、SPO2を測定する
  • 切り傷、擦り傷、やけど等の処置
  • 爪きり
  • 口腔ケア
  • 耳そうじ
  • ストマ排泄物を捨てること
  • 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと
  • 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器による浣腸
  • 皮膚への軟膏の塗布(床ずれの処置を除く)
  • 皮膚への湿布の貼付
  • 点眼薬の点眼
  • 一包化された内用薬の内服
  • 肛門からの坐薬挿入

ただし、医学的な判断が必要な場合は介護士は行えません。

例えば耳そうじについては、耳垢塞栓(じこうそくせん)という耳垢で完全に耳の穴が塞がってしまっている場合、介護士は実施できません
医療職による医学的な判断、技術が求められるためです。

爪切りの場合でいえば、糖尿病の利用者に対してや、爪が肥厚(ひこう)してしまっている場合も介護士が行うことはできません

医療行為にあたるのかどうか、判断に迷った場合は医師や看護師に確認することが重要です。

参照:厚生労働省|医師法第17条、歯科医師法第17条および保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)

条件付きで介護士が実施できる医療行為

条件付きで介護士が実施できる医療行為には以下の2つがあります。

  • 喀痰吸引(かくたんきゅういん)
  • 経管栄養

社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、平成24年4月1日から研修を受けた介護職員は医療や看護の連携による安全確保が図られていること等の一定の条件のもとで、都道府県の登録を受けた事業所において、上記2点の行為を実施できるようになりました。

喀痰吸引(かくたんきゅういん)とは

喀痰吸引とは吸引機を使用して利用者の口腔、鼻腔、気管カニューレ内にある唾液、痰を吸引することです。

痰を出すことができなければ、痰が肺に入って誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうリスクがあります。

高齢になると、喉周辺の筋力が落ちて自分の力で痰を出すことができないことも。

そのような利用者にとって、痰の吸引は欠かせない医療的ケアです。

経管栄養とは

経管栄養とは口から食べ物を食べることができない利用者が、腹壁に穴を開け、チューブを経て直接胃に栄養を送る方法です。

経管栄養には胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養の3種類があります。

>>>あわせて読みたい「介護職が知っておきたい経管栄養の知識|必要な3つのこと」

介護士が喀痰吸引、経管栄養を行うための条件

平成27年度以降に介護福祉士の資格登録をした場合と、平成27年度より前に介護福祉士の資格登録をした場合で条件が異なります。

<平成27年度以降に介護福祉士国家試験に合格した場合>

介護福祉士の登録を行い、介護福祉士登録証の交付を受ける

事業者に終業後、実地研修を修了し、修了証明書の交付を受ける

社会福祉振興・試験センターへ介護福祉士登録証の変更届け出をする

<平成27年度より前に介護福祉士の登録をしている場合>

上記2と3の手続きが必要になります。

参照:厚生労働省|平成24年4月から、介護職員等による喀痰吸引等 年4月から、介護職員等による喀痰吸引等(たんの吸引・経管栄養)についての制度がはじまります。
参照:公益財団法人社会福祉振興試験センター|「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の届出について

喀痰吸引等研修の種類

喀痰吸引等研修には行える処置の種類と対象者の違いによって、1号研修、2号研修、3号研修の3種類に分かれています。

1号研修、2号研修の対象者である不特定多数の者とは介護施設などの利用者が想定されています。

一方、3号研修の特定の者とは在宅で暮らすALS患者などの利用者が想定されています。

参照:厚生労働省|喀痰吸引等研修~研修課程

介護士はすることができない医療行為

次に、介護士がすることができない医療行為について確認していきましょう。

下記は介護現場でよくみられる医療行為のなかで、介護士が行えないものです。

インスリン注射

血糖測定

摘便(てきべん)

褥瘡処置(じょくそうしょち)

インスリン注射

インスリン注射は糖尿病の患者が血糖値を下げるために行う治療です。

利用者本人が自分で実施、またはその家族が実施していることもあるので、なかには介護士もできると勘違いしている人が居ることも考えられます。
しかし医療行為のため、介護士はすることができません

利用者やその家族から頼まれたとしても、医療行為なので介護士はできないということをしっかりと説明して納得してもらいましょう。

ただし、利用者がインスリン注射を行う際のサポートをすることはできます

  • インスリン注射を忘れないように声をかける
  • 血糖値測定器と試験紙の準備
  • 血糖値測定器に表示された血糖値を利用者と介護士が一緒に確認する
  • 投与すべきインスリンの量を利用者と一緒に確認する
  • 注射器を刺すように声をかける
  • 注射器を片づる

参照:厚生労働省|グレーゾーン解消制度・新事業特例制度

血糖値測定

血糖値の測定についても医療行為であるとされており、介護士はすることができません。

血糖値測定は針を使用し出血を伴う行為です。

インスリン注射同様で本人が行うことがありますが、だからといって介護士が行わないよう注意が必要です。

摘便(てきべん)

摘便は自力で排便できない利用者に対して、肛門から手指を入れて便の排出を助ける処置です。

腸壁を傷つけると出血の危険もあり、介護士は行えません

介護士は、看護師の処置の最中に利用者の体を支えたり、声を掛けたりなど、サポートをすることは可能です。

褥瘡(じょくそう)の処置

褥瘡(じょくそう)の処置には、どの医薬品を塗布するか等の医学的な判断が求められます

介護士は処置の最中に利用者の体を支えるなど、看護師が行う褥瘡の処置をサポートすることができます。

介護士が認められていない医療行為をしてしまった場合の罰則は?

医師法31条には医師でないものが認められていない医療行為を行った場合、『3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する』と規定されています。

懲役刑に処されると、介護福祉士の資格が剥奪されます。

参照:社会福祉士及び介護福祉士法 3条、32条、42条

まとめ

介護現場での医療行為は、一歩間違えれば重大な事故に繋がるリスクがあります。

介護士に認められていない医療行為をしてしまうと、罰則に問われる可能性も。

無知が原因で大きなトラブルを起こしてしまわないよう、この記事でしっかりと確認しましょう。
 

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