ダニから感染する疥癬ってどんな病気?介護施設での予防方法は?

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介護の現場ではさまざまな感染症に注意して働きますが、ダニが原因で発生する「疥癬(かいせん)」という感染症も聞いたことがあるのではないでしょうか。疥癬はその感染力の強さから、介護施設で集団感染してしまった事例も報告されています。今回は、介護施設における疥癬の予防方法と実際に感染が発生してしまった場合の対処法を解説します。

疥癬(かいせん)ってどんな病気?

疥癬(かいせん)はヒゼンダニが皮膚に寄生して発症する皮膚の病気です。

かゆみや発疹などの症状が特徴的であり、皮膚への接触により感染する直接的な感染と、衣類やベッドシーツなどを触ることで感染する間接的な感染があります。

疥癬の種類は、通常の疥癬と通常の疥癬が重症化した角化型疥癬(ノルウェー疥癬)の2種類です。

角化型疥癬は感染力が強く、介護施設などでは集団感染する危険性もあります。
そのため日頃から疥癬の予防を心掛け、発生時は感染拡大を防げるように適切な対応が必要です。

ヒゼンダニとは

ヒゼンダニは疥癬虫とも呼ばれるダニの1種です。

大きいものでも体長は400μmほどであり、肉眼ではほとんど見えません。

卵→幼虫→若虫→成虫の順で成長し、2週間ほどの期間で成虫に成長します。
幼虫・若虫・雄の成虫は皮膚の表面を移動するため、接触感染の原因となります。

皮膚に掘ったトンネル(疥癬トンネル)や毛穴に潜み、4~6週間かけて1日2~3個ずつ産卵します。

ヒゼンダニ自体や脱皮した抜け殻・フンなどによってアレルギー反応が起こり、疥癬の特徴でもあるかゆみが発生します。

ヒゼンダニは乾燥に弱く、人の皮膚から離れると2~3時間で次の宿主に移動する力を失います。
また、熱にも弱く50℃では10分程度で死滅し、人肌の温度ではない環境だと動きが緩慢です。

通常の疥癬と角化型疥癬の違い

角化型疥癬は通常の疥癬が重症化したものです。

それぞれの違いを解説します。

 通常の疥癬角化型疥癬
ダニの数 数十匹以下 100万~200万匹
潜伏期間 約1ヵ月~2ヵ月 4日~5日
感染経路 肌と肌との接触 ・肌と肌との接触
・感染者が使用した衣類など
・剥がれ落ちた皮膚
症状

・皮膚にかゆみ
・赤い湿疹
・小豆大のしこり

・皮膚にかゆみ
・赤い湿疹
・小豆大のしこり
・角質厚肥
部位 頭・首以外の全身 全身

通常の疥癬は疥癬トンネルと呼ばれる皮膚の湿疹が特徴的です。
手のひら・指の間などに出現するケースが多く、脇・臀部・陰部などにも出現する場合があります。

角化型疥癬は頭・首も含めた全身皮膚の角質が肥大し、灰色〜帯黄白色に変色するのが特徴的です。
特に手足・臀部・肘・膝などに顕著に見られます。

最近では限局型角化型疥といって身体の一部の皮膚の角質が肥大するケースもあり、なかでも爪の皮膚に見られる爪疥癬は水虫の爪白癬と間違えやすいため、注意が必要です。

なお、角化型疥癬はかゆみがないケースもあります。

参照:国立感染症研究所|疥癬とは

介護施設における疥癬の予防方法

疥癬は感染力が強いため予防が大切です。

介護施設で実施できる感染予防対策は以下の通りです。

正しく手洗いする
グローブを適切に使用する
皮膚状態の観察を欠かさない

それぞれの対策を説明します。

正しく手洗いする

手洗いは新型コロナウイルスやインフルエンザなどの対策の基本ですが、疥癬に関しても同様です。

腕時計や指輪はあらかじめ外しておく
流水で手をよく濡らして石鹸をつける
手のひら・手の甲・指先・爪の間・指間・手首を念入りにこすって洗う
石鹸を流水で十分に洗い流し、清潔なタオルやペーパータオルで拭く

上記の流れを意識して、正しい手洗いを心掛けましょう。

手袋を適切に使用する

感染予防に関する考え方で、スタンダードプリコーションという考え方があります。

感染症の有無にかかわらず、利用者様の血液・体液・排泄物・粘膜を感染の可能性のあるものとして扱うという考え方です。

排泄介助や口腔ケアなどの場面でも手袋を使用するのは、スタンダードプリコーションの考え方にもとづいて利用者様とスタッフ双方の感染のリスクを減らすためです。

通常の疥癬では、長時間にわたって皮膚と皮膚が接触したままでなければ感染しません。

しかし角化型疥癬は感染力が強く、感染者が使用した衣類やベッドシーツなどを介して感染する恐れもあります。

ほかにも排泄物を介して感染するノロウイルスや血液を介して感染するC型肝炎のリスクもあるため、日頃のケアで適切に手袋を使用することが大切です。

皮膚状態の観察を欠かさない

疥癬は皮膚のかゆみ・赤い湿疹・小豆大のしこり・角質肥大などの皮膚症状が特徴的です。

また強いかゆみもありますが、高齢者はかゆみを感じにくかったり角化型疥癬においてはかゆみがないケースもあります。

さらに介護施設を利用されている利用者様の中には、認知症や脳梗塞の後遺症である失語症などが原因でかゆみなどの自覚症状をうまく伝えられない方もいます。

そのため、日常的にケアをしているスタッフが皮膚状態の変化にいち早く気付くことで、感染拡大を防止できるでしょう。

介護施設における疥癬発生時の対応方法

感染力が強い疥癬ですが、発生してしまった場合はどのように対応すればよいのでしょうか?

厚生労働省 老健局が推奨している対応をご紹介します。

スタッフの対応

疥癬を発症した利用者様に対応する場合、スタッフが注意するポイントは以下の通りです。

利用者様対応時は手袋・使い捨ての長袖ガウンを着用する
手袋・ガウン使用後はビニール袋に密封して破棄する
介助時に着用していた衣類は自宅へ持ち帰らず、施設で洗濯する
スタッフ自身の皮膚状態の観察も欠かさず、疥癬の症状が出現した場合は皮膚科への受診・管理者への連絡を行なう

スタッフが感染してしまうと同居している家族・施設のスタッフ、利用者様への感染につながってしまう恐れがあります。

対応時は上記のポイントに注意し、適切に対応しましょう。

利用者様への対応

疥癬を発症した利用者様への対応は以下の通りです。

症状が認められたら早期に皮膚科へ受診
利用者様の身体を清潔に保つ(可能であれば毎日の入浴)
かゆみで皮膚を傷つけやすいため爪切りの実施
処方された外用薬の適切な塗布
角化型疥癬の場合、個室管理が望ましい

疥癬は原因となるヒゼンダニを駆除するために内服薬や外用薬を用いて治療します。

内服薬は強い駆虫効果のあるイベルメクチンやかゆみを和らげるためのかゆみ止め、外用薬はフェノトリンローションやクロタミトンクリームなどが使用されます。

外用薬は主治医に塗る範囲を確認し、指示のあった範囲はくまなく塗りましょう。

ヒゼンダニは湿疹がない部分の皮膚に潜んでいることも珍しくありません。
特に指間・足・臀部・陰部は塗り残しやすいため注意が必要です。

また、角化型疥癬の場合は感染力が強いため個室管理が望ましく、入浴に関しても順番は最後にしましょう。

角化型疥癬に感染している方から剥がれた皮膚には、ヒゼンダニが含まれている可能性があり感染の原因となります。
使用した浴室や居室などはこまめに掃除機掛けし清潔を保ちましょう。

参照:厚生労働省 老健局|介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き第2版

まとめ

ダニが原因となる疥癬は感染力が高く、介護施設では集団感染する恐れもある病気です。

しかし適切に受診・治療・対応すれば治るため、スタッフの気付きや対応が重要となるでしょう。

今回ご紹介した疥癬の予防方法や実際に発生した場合の対応方法を踏まえ、利用者様およびスタッフの健康を守るのに役立ててみましょう。

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