お役立ち情報
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介護施設における脱走について解説します。介護施設で働く中で、帰宅願望をお持ちの利用者様の対応をした経験がある方も多いのではないでしょうか?帰宅願望などの訴えがある利用者様の対応をおろそかにすると、施設から利用者様が脱走してしまい、転倒や事故に遭ってしまうなどのリスクがあります。本記事では利用者様が施設を脱走してしまう理由や、実際の裁判例をもとに施設側が求められる対応をご紹介します。
■目次
介護施設から利用者様が無断で脱走するのは離設事故といい、施設によっては事故扱いとなります。
介護施設を利用している利用者様の多くは見守りが必要であり、1人で外に出てしまうと怪我をしてしまったり、交通事故に遭う恐れもあるでしょう。
そのような場合には介護施設側の責任が問われるケースもあります。
利用者様が介護施設から脱走するのはどのような理由があるのでしょうか?
認知症になると、さまざまな原因によって脳の働きが悪くなり、自分自身や周囲の状況などがわからなくなってしまいます。
それによる症状の1つに徘徊があり、記憶障害によってなぜ施設にいるのか忘れてしまったり、帰宅しようとして道に迷ってしまったりして行方がわからなくなることも。
また、認知機能の低下から転倒や交通事故に遭ってしまう危険性も高く、認知症のある方が1人で施設から離れて外を歩行するのは危険であるといえます。
介護施設での生活が嫌で脱走する利用者様もいるでしょう。
施設では集団生活を送るためスタッフも常駐しており、集団生活に慣れなかったりスタッフの世話になりたくないと考えるたりする方もいます。
自宅に帰りたいという要望が通らなければ、脱走という選択肢を選んでしまうケースもあるでしょう。
介護施設から利用者様が脱走してしまうのを防ぐためには、3つの対応策があります。
それぞれ解説します。
脱走を防ぐには情報収集し、アセスメントをしっかり行いましょう。
利用者様の心身状態はさまざまです。
施設に居ることによって不安や不満を感じている方もいるでしょう。
日頃の様子や発言について、不安・不満の原因はなにか、落ち着かない時間帯などを観察し、把握に努めることも大切です。
また、それぞれの利用者様の趣味や好きな話題などを把握しておくと、スタッフとの会話を楽しんでもらえます。
会話に集中すると脱走しようと考えていたことをいつの間にか忘れ、施設で楽しんで過ごしてもらえる場合もあるでしょう。
施設内でこまめに見守りや巡視をし、常に所在確認を行なうのも大切です。
こまめに見守り・巡視を行なっていると、例えば脱走につながる鍵を開けるなどの行為も早急に発見でき、脱走を未然に防ぐことができるでしょう。
万が一脱走した場合でも脱走にいち早く気づければ、転倒や事故に遭う前に発見できる可能性も高くなります。
そのため、脱走するリスクのある利用者様は、こまめに所在確認しましょう。
スタッフ間での情報共有の徹底により、利用者様の脱走を防げる可能性があります。
介護施設ではスタッフがシフト制で働いているため、申し送りなどで利用者様の状態などを情報共有します。
例えば帰宅願望があり落ち着かない状態の利用者様がいるにもかかわらずその情報を共有しなければ、交代後のスタッフは注意を怠ってしまう可能性もあるでしょう。
スタッフ間で連携して利用者様の安全な生活を守るためには、情報共有は重要であるといえます。
利用者様が施設から脱走してしまった場合、警察に相談したうえで家族などのキーパーソンに状況などを報告し、捜索を続けます。
また、近隣にお住いの方にも見かけた際には連絡をいただけるように伝えましょう。
そのためにも、日頃から近隣の住民の方々とは良好な関係を築いておくようにすると、ご協力いただけるでしょう。
介護施設から利用者様が脱走し、亡くなってしまった事例があります。
実際の裁判の内容をもとに、介護施設としてどのような義務が発生しているのか確認しましょう。
■概要
デイサービスを利用していた利用者様が非常口から施設を抜け出して行方不明になり、その日の夜に低体温症により亡くなりました。
■当事者
利用者様:要介護2、アルツハイマー型認知症(認知症高齢者自立度ⅢaないしⅢb)
■事業所
社会福祉法人
デイサービスは特別養護老人ホームなどの建物の2階にあり、事故当時は28名の利用者様に対し、9名の職員体制でした。
■事故までの経緯
事故までの経緯は以下の通りです。
❶主治医意見書・介護認定審査会の審査において徘徊がある内容が記載されていました。
❷デイサービス契約時に作成されたサービス計画書に徘徊がある内容が記載されていました。
❸事故の当日、利用者様28名に対し9名のスタッフで対応していました。実際に利用者様が施設を抜け出した時間は4名が休憩に入っており、スタッフ5名で見守りを行っていました。
❹正面出入口は人が出入りすると、鈴の音がなる装置の設置など対策がされていました。しかし、非常口には対策がされておらず、施錠もされていませんでした。
❺事故当日の朝、利用者様は「帰りたい」「主人が迎えに来ている」などの帰宅願望がありました。
❻事故当日の昼ごろ、利用者様はデイサービス建物内を歩き、非常口から施設を抜け出して敷地外に出ました。その20分後、スタッフが抜け出しに気づいて捜索活動を行いましたが、利用者様は発見できませんでした。その日の夜に低体温症により亡くなりました。
■裁判所の判断
施設は利用者様が施設を抜け出して徘徊することは予測でき、利用者様に徘徊癖があると認識している以上、施設から抜け出して徘徊することを警戒するのは当然という判断でした。
この事例では具体的に利用者様の動静を見守っていたとはいえず注視義務違反が認められ、介護施設側に3,000万円の賠償が認められました。
裁判所の判断をもとに、今回の事例で介護施設側に求められる対応は以下の通りです。
●帰宅願望がある利用者様に対する具体的な見守り
●徘徊癖のある利用者様の一般的な情報共有
●抜け出して徘徊するリスクが高まった場合は、担当者をつける・全スタッフで徘徊する利用者様への見守りを意識 など
なお以上の対応を行なうためには、日頃から利用者様の様子や情報共有は欠かせないといえます。
事故につなげないためにヒヤリハットを活用している事業所もあります。
事故につながる危険性を洗い出すためにも積極的にヒヤリハットを報告し、危険につながりそうな情報を共有しましょう。
>>>あわせて読みたい「介護現場でのリスクマネジメントとは?必要な理由や実践方法」
介護施設からの利用者様の脱走はどのような施設でも起こる可能性があります。
しかし、スタッフの意識や情報共有によって防げる可能性もあるでしょう。
今回ご紹介した脱走を防ぐための対応方法や実際の裁判例をもとに、利用者様が安全に過ごせるように日々の業務に役立てましょう。
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