言語聴覚士とは?活躍する場所や他のリハ専門職との違いを解説

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言語聴覚士は通称STと呼ばれ、「ことば」と「食べる」能力に特化したリハビリの専門職です。理学療法士や作業療法士程の知名度はありませんが、その専門性は医療施設・介護保険施設を問わず高く評価されています。今回は、言語聴覚士とは何か、勤務先や他のリハビリ職との違い、年収、なり方について解説します。

言語聴覚士とは

言語聴覚士は、話す・聞く・食べる能力に関するリハビリテーションのスペシャリストです。

病気や怪我により、話すこと・聞くこと・食べる事に関して何らかの障害を持っている方にアプローチし、その能力の回復・改善を目指すことが主な仕事内容になっています。

具体的には、医学的知識に基づいて以下の3種類の障害に対する専門的なリハビリテーションを実施します。

リハビリテーションの実施に当たっては、医師や看護師はもちろん、理学療法士や作業療法士といった他のリハビリ職なども連携します。

言語障害(うまく話せない、話が理解できない、文字が読めない、文字が書けない、ことばの遅れ など)

音声障害(声帯などの病変や障害によって声が出にくい など)

嚥下障害(うまく食べ物を噛むことができない、うまく飲み込むことができない など)

このように、言語聴覚士は子どもから成人・お年寄りまで全ての世代を対象としています。

さまざまな職種と連携しながら、支援チームの一員であるリハビリテーションの専門職として活躍しています。

言語聴覚士の勤務先は?

言語聴覚士の活躍する場所は、多岐にわたります。

言語聴覚士の人数は、2022年3月現在で38,200名

主な勤務先は以下の通りとなっています。

所属機関割合
医療機関 67.0%
特養・老健 20.2%
福祉関係(高齢者施設以外) 7.3%
養成校 2.0%
研究・教育機関 1.5%
学校教育 0.9%
その他 1.1%

出展:一般社団法人 日本言語聴覚士協会

言語聴覚士の勤務先は、病院や高齢者の介護施設だけではありません。

「ことば」と「たべる」ことに関わる全ての年代・全ての人が対象になっています。

医療機関

言語聴覚士の勤務先で最も多いのが、病院を始めとした医療機関です。

中でも多いのが疾病になった直後の急性期治療を担う総合病院と、治療を終えた後に低下した機能の再獲得を目指す回復期リハビリテーションを担うリハビリテーション病院。

患者によっても実施するリハビリの内容が異なります。

例えば言語障害が起きやすい脳卒中の後遺症に対しては失語症のリハビリテーションを実施し、認知症がある患者に対しては本人のコミュニケーション能力の向上を図る一方で、どうすれば本人とうまくやり取りができるのか方法を探るといったアプローチも行います。

特養・老健

数ある介護保険施設の中で、特に言語聴覚士が所属していることの多い施設が特別養護老人ホーム介護老人保健施設です。

基本的に「言語に関する障害」「聞こえに関する障害」「嚥下に関する障害」にアプローチするという点では同じです。

しかし、特別養護老人ホームは機能の維持が目的であるのに対し、介護老人保健施設の場合は在宅復帰に向けた機能向上のリハビリという違いがあります。

高齢者の場合は、なかなか言語や聴覚に関する障害よりも、体調を維持するために安全に食事を摂るため「嚥下に関する障害」にアプローチすることが多くなります。

>>>あわせて読みたい「介護老人保健施設(老健)での働き方は?給与や向いている人は?」
>>>あわせて読みたい「【徹底比較】養護老人ホームと特別養護老人ホームの違いとは?」

福祉関係

障がい児に対する発達支援や、在宅で生活している高齢者や障がい者などに対するリハビリテーションも行います。

障がい児に対する支援としては、例えば肢体不自由な子どもや発達障がいがある子どもに対し、言語・コミュニケーションの発達を促すことによって生活の質(QOL)の改善を目指します。

リハビリテーションに馴染める雰囲気作りから実施し、ゲームや体を動かす遊びを通じて自然に言葉を習得できるようなプログラムを実施します。

在宅生活者に対する支援としては、高齢者向けの通所リハビリテーション障がい者向けの就労支援施設などに所属し、その人ひとりひとりに必要なプログラムを作成して機能訓練に取り組みます。

また、訪問看護事業所や訪問リハビリテーションの事業所に所属し、利用者の自宅を訪問して訓練を実施する場合もあります。

養成校

経験を積んだ言語聴覚士の中には、指導のため養成施設の教員として働く人もいます。

言語聴覚士を目指す学生に対して講義するだけでなく、実習や試験対策、受験生への広報などが主な業務内容となります。

研究・教育機関

大学・大学院などの研究教育機関に所属し、専門分野の研究や指導を行う言語聴覚士もいます。

自身の業務経験を活かして新たな理論を導き出したり、データや専門家としての見解をまとめて論文を発表したりすることで、医療・介護全体に働きかけていくのが主な仕事内容となります。

学校教育

割合は低いですが、小中学校の特別支援学級や特別支援学校(養護学校)などに所属して学校教育に関わる言語聴覚士もいます。

児童や生徒のことばに関する指導・コミュニケーション能力の向上・集団生活への適応を高めるための指導を行います。

言語聴覚士が学校教育に関わるためには、言語聴覚士の資格の他に教員免許の取得が必要になる場合が多いです。

言語聴覚士と他のリハビリ職の違い

言語聴覚士は「ことば」と「食べる」ことに特化したリハビリの専門職であると紹介しました。

ここで気になるのは、他のリハビリ職である理学療法士(PT)・作業療法士(OT)との関係です。
似ているようで、この3つの資格には大きな違いがあります。

理学療法士は、起きること・立つこと・歩くことといった、主に日常生活上に必要な基本的な動作を中心にリハビリテーションを行います。
作業療法士は書く・服を着る・買い物をするといったような、日常生活上の応用的な動作の維持や改善、精神的ケアを行っています。

このように、言語聴覚士と理学療法士・作業療法士は対象とするリハビリの分野が異なるのです。

言語聴覚士の年収は?

厚生労働省の調査によると、言語聴覚士の平均年収は426.5万円でした(理学療法士や作業療法士などを含む平均値)。

同調査での看護師の年収は498.6万円となっており、比較的低いという印象をお持ちになる方も多いかもしれません。

実は、言語聴覚士という資格が誕生したのは1997年と歴史が浅く、まだまだ若い人が多い傾向にあります。
日本言語聴覚士協会会員動向によれば、会員のうち20代〜40代の割合が実に89.3%を占めています。

言語聴覚士の現役世代の年齢層が低いということは、これから年収が伸びていくということ。

年収データとしての数値が上がってくるのは、これからということになるでしょう。

出典:厚生労働省|令和3年 賃金構造基本統計調査
   一般社団法人日本言語聴覚士協会|会員動向(令和4年4月1日現在)

どうすれば言語聴覚士になれる?

言語聴覚士になるには、高校や一般の大学を卒業後に専門の教育機関を修了し、国家試験に合格する必要があります。

高校からの場合は3年間の短大や4年制大学に入学します。

一般の4年制大学を卒業した後の場合は、指定された大学や大学院の専攻課程や専修学校(2年間)を卒業することが必要です。

国家試験の過去5年間の合格率は65.4〜79.3%で推移しており、毎年1,500〜2,000人程の言語聴覚士が新たに誕生しています。

まとめ

ここまでは、言語聴覚士に関する情報について以下の通りご紹介してきました。

言語聴覚士とは、「ことば」と「食べること」に関する能力に関するリハビリの専門職である

言語聴覚士の勤務先は病院が多く、特養や老健、他の福祉関係施設などがある

言語聴覚士は、異なる専門領域をもつ理学療法士や作業療法士などと連携してリハビリにあたる

言語聴覚士の年収は最新の調査で426.5万円。年齢層が若いため給料面も伸びしろがある

言語聴覚士になるためには、専門の教育機関(2~4年)を卒業後に国家試験に合格する

これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

 

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